キョーガク


 ええとー、

『……ご先祖で、狩人で、敵対する双方から尊敬されとったひと…?』

 おまけに、婚姻関係にあった、てことは。

『そのひともイミューンやったん?!』

 いや、イミューンでなくても、確率で言うたら人との間にも子どもは残せるみたいやけど、アレイストたちの口振りでは、イミューンでない人間は愛人扱いみたいやったし。

一族と人間で、婚姻が認められてるのはイミューン相手のときだけ。

「らしいね。伴侶との間に三人子供がいる記述があるから、その当時にしても一族にとっては特別な存在だったんだろうな。
女神の剣にアルジェインと名がついた縁の人物でもある」

 は……。

「アルジェインの所有者でもあったんだ」
「彼の人が持っていたから、アレはアルジェインと呼ばれるようになったんじゃなかったかな」

付け加えられたアストリッドの言葉に私は頭を抱えたい気分になった。

 そんな、そんな大事なもんを私に渡すなーーー!
 あっさりパクられてるし!

『どないしよ、アレ、今リーリィが持っとるんやんな? めちゃめちゃヤバイんやん!』

 リーリィにとっては棚からぼた餅? 鬼に金棒?

普通の人間であっても、吸血鬼に対抗できるらしい狩人とかいうヤツが銀剣持ったら、アレイストたちなんて、

『皆殺しやっ!!』

怖い極論に達した私が叫ぶと、どうどう、とアストリッドに宥められる。

「いくら狩人といっても、一人で我々を滅ぼすなど無理だから。不意をつかれたならいざ知らず、襲撃があるとわかっていれば手は打てるよ」
「しかも、こちらには質があるからな」

 質?
 人質って……、誰? なに?

と自然で問うた私を少し気遣うように見つめてから、アレイストが口を開いた。

「ムルデンは拘束したままだ。牢に繋いだ」

 ……え〜と。
 ムルデンゆうのは、確か、クリストフェル・クソッタレ・強姦魔野郎の屋号やったな。
 屋号ゆうのはちと違うかもやけど。

 拘束、はわかる。思いきりアレイストぶちのめされて捕まっとったし。牢に……、

 ろ、牢? 牢ってナニ、どこの……、

アストリッドがオモムロに下を指差す。

 下の部屋とかゆうんやないよな、てことはつまり更に下―――
 地下?
 地下牢ッ!?
 ひいいいいっ。そないなもん下に毎日生活しとったんかいっ!


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