銀<アルジェン>


「油断がなかったとは言えませんが……、女性の身、しかもあの若さであの身体能力と体術、かなり高レベルの狩人であることは間違いないと思われます」

「――“アルジェン”と呼ばれてもおかしくないような?」

何事か考え込んでいたアストリッドが呟いた言葉に、アレイストとロルフが険しい顔になる。

「女神並みの冒涜だぞ、それは」

 はーいちょっと待ってー。
 仲間内だけでわかる会話、せんといてー。

“アルジェン”て何さ。
“アルジェイン”となんか関係ある?

不穏な気配を漂わす三人に挙手してそう問いかけると。
三人は少し顔を見合わせたあと、代表してアレイストが話し出した。

「――アルジェンとは、伝説の狩人のことだ。
 銀の中の銀と言われ、銀そのもののごとく、立場に惑わされることなく正確に魔たるものだけ見定めて滅ぼす力を持った狩人。
狩人からも、我々からも、一種畏怖と尊敬を持って語られる人物だが――」

 天敵の勇者的な立場なひとやったんかいな?

にしては、アレイストから感じる口調に嫌悪はない。

「彼の人は人だとか魔物だとか、生まれた種は関係はなく、害悪を滅ぼすことを生としていた方でね。
その行動は全て自身の意思で決まり、罪なき一族の者が人に追われたときなど、護ることもあったそうだ」

しかも、と。
ここ重要ですよ、テストに出ますよ、赤マルしといてくださいね、なんて試験前の教師のようにアレイストは告げる。


「我が一族の一人と婚姻関係にあった」


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