普段の信用度の違い。


「ちょっとー、今はあたしがミッキと愛を深めてるとこなんだから、あんた遠慮しなさいよ」
「冗談。例え叔母上と言えど勝手にミツキと愛など深めてもらっては困ります」
「叔母上ゆーな! 取って付けた敬語も気色悪い!」
「年長者に敬意を表しているだけですが?」
「人を年寄りみたいに言うな! あんたよりいっこ上なだけだっつの!」
「どうでもいいがミツキにベタベタするな」
「心せまッ! 言っとくけどね、ミッキと先に仲良しだったのはあたしなんだからねっ」

 小学生かあんたらは。

アホな言い合いを両端から聞かされ、ゴツいワンコ二匹にギュウギュウ抱きしめられる。

 あ〜、うっとうしい。

頭痛がしそうなウザイ従姉弟同士のやり取りを、どう終わらせてやろうか考えていた私の目に、ドアの向こう側に所在なげに立った青年の姿が入った。

「ロルフ! 怪我、」

救出騒ぎのときにボンヤリ見た通り、彼は頭と左腕を負傷していた。

 あの状況からして、あたしを助けるためになんか闘っとったんやろ?
 左腕吊っとるって、結構な怪我違うん?

 二人の腕から抜け出して、部屋に入って来ようとしないロルフの元へパタパタ小走りに行く。

「ミツキ様……」
「大丈夫でしたか? ごめんなさい、私……」

あれだけ注意してくれてたのに、コロッと騙されて手を煩わせ、オマケに怪我までさせてしまったことを謝ろうと見上げると、

「お守りできず、申し訳ありませんでした……」

ロルフはその場に膝をつき、頭を下げてくる。

 土下座ーーー?!

『いや、なんでロルフが謝んのん? てゆーか怪我人! 安静にしてー!』

ワタワタして彼を起こそうと、怪我してない方の腕を取ると、後ろから伸びてきた手がそれを阻止した。

「……何か我々に対する態度と違わないか、どういうことだ……ロル、ミツキは詫びなくてよいと言っている。立て」

 なに偉そうに言うとんねん。

 ツッコもうと思うたけど、確かにロルフにとっては主やし、偉い相手になるのかと口をつぐむ。

ロルフは私とアレイストの顔を交互に見て、少し躊躇ったあともう一度だけ頭を下げて、ふらつきながら立ち上がった。

 あああ。
 顔にも傷がっ。
 ええ男がもったいないっ。

「痛そうです。座って座って!」

 なるべく怪我に触らないように、彼をソファーへ誘導する。

「……ホントに態度違うし」
「意外な伏兵?」
「めげるからやめてくれアスタ……」

 背後でなんや言うとるけど無視や無視。


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