しょんぼりアスタ
朝、目が覚めたら、アストリッドがドアの隙間から半分だけ頭を覗かせてベッドでボケている私をじいいっと見ていた。
ぼけ〜。
じい〜。
ぼけ〜〜。
じいい〜〜〜。
『ってなんやねん! きっしょいでアスタ、そんなとこからナニ覗いてんねん!』
スイッチが入った私が腕を振りつつ怒鳴ると、ショボショボ長身を小さくしながらこっちへやって来る。
と、思ったら唐突に抱きついてきて。
『ごめん、ミッキ』
……ってあんたもかいな。アレイストが落ち着いたと思ったら今度は叔母様なの〜?
昨日、アストリッドは授業の間は私と一緒だったけど、寮監の仕事があるからロルフにバトンタッチして帰ったんだ。
だから、たぶん、自分がいない時に私が襲われたことを気にしている。
つくづく、似たような落ち込み方する従姉弟やな。
『アスタはアスタの仕事あったし、昨日居らへんかったんは仕方ないやろ? ちゃんとアレイストが助けてくれたし、ダイジョブやってんから』
肩口に乗せられたオレンジ色の頭をペシペシ叩く。
『……あたしもアレイストも過信してたんだよね。何だかんだ、力が強いのはあたしたちの方だから、いざとなればこっちが勝つんだ、なんて思ってて……』
らしくない弱った声で私の胸元に悔恨を漏らす、アストリッド。
ぎゅうっと子供みたいにしがみついてくるのも一緒で、何だかおかしい。
くふくふ笑ってオレンジ頭を撫でていると、ムッと拗ねた目で睨まれた。
『人が反省して心配したってのに、何で嬉しそうなの』
『や、だってさ』
私が傷つけられたことで、アレイストもアストリッドもらしくないまでに落ち込んでる、
それって、
『あたし大事にされとるな〜、って嬉しいんやん。愛を感じるわぁ』
そういうふうに、思ってくれる友達がいるって、シヤワセ者やん?
昨夜、あたしと仲良ぅしてくれてるメイドさんらも入れ替わり立ち替わり顔見に来てくれて、ご無事で良かったです、とかお守りできなくてごめんなさい、とか、なんで彼女らが謝るんか謎やねんけどそう言うてギュウギュウしてくれたん。
使用人の男のひとらは流石に寄るのは遠慮してはったみたいやけど、気遣ってくれてたんはわかった。
ただの居候やのに、そういう風に想ってもらえるんて嬉しいやん。
『……もー、ミッキってば、だから奴も参っちゃうんだ〜! このう、可愛いヤツめ!!』
『ふぎゃっ!?』
何故か目元を赤くしたアスタに勢いよく押し倒される。
女子としては規格外にデカイ身体に押し潰されぎゅっと呻いた。