沈めて、蓋をして、


 いいにおい。
 ぜいたくー。
 キモチイイー。

ここにあるものは私のために用意したんだから遠慮せずに好きに使えばいいよ、と言われていても、メイドさんたちに薦められても、身に染み付いた貧乏性とそんな洒落たものがむず痒く感じる照れもあって、あまり使わなかったんだけどさ。

 気持ちささくれてるし。
 今日くらいはええやんな。

 アレイストがあんなんやし、あたしまでブルーになっとったら空気悪うて仕方ないわ。

 危機一髪で済んだんやし。

 またこんなことにならんように、もっと気ぃつける、あたしがせなあかんのはそれ。

パシャリと顔に湯を流すと、ピリッと唇に痛みが走った。

 そういや殴られた……、

舌先に、鉄の味。
唇を塞がれて蹂躙されたことを思い出す。

 ――あかん。

視線を下げると、アチコチに打撲のあとや、……強く掴まれて痣になった指のあと、なんかが見えて。

 ――思い、出すな。

また震えがぶり返しそうになるから、見えないふり、分からないふりをする。

いくら洗っても、感触は薄れない。
お腹の中に恐怖が凝ってるみたいで気持ちが悪かった。


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