ミッションクリアならず


後悔。
それは後で悔やむこと。

思い出してみれば、小学校の成績表にはいつも、「ミツキさんは元気で明るく友達も多い人気者ですが、もう少し落ち着きましょう」などと書かれていた私。

今でこそ、行動する前に一回立ち止まるクセが10回に4回くらいついた私だが、一度気になるものを見つけたら後先考えず“それ”しか追わなくなるクセがあることを、自分でも忘れていた。


「やあ、ミツキ。最近よく君と目が合う気がするけど、やっと運命の女神が微笑んでくれたのかな?」

ゴージャスな薔薇の幻を背負い、アレイストが私を見下ろして微笑む。

 運命の女神て何や。

うさんくさい貴公子スマイルを浮かべるアレイストに、小首を傾げて「そうですか?」と分からないふり。

 ちょ、どうでもええけど何で壁に手をついてアタクシを囲むように身を寄せるのデスか。端から見たら、それって迫ってるようにも見えマスよ?
 てゆうか、近い近い近いっちゅうねんーーー!

「一緒の講義がないから、今日は君に会えないかと思っていたから、嬉しいな」

 あたしはちっとも全くサッパリ嬉しくあらへんけどな!
 くっそ、尾行の才能ないわ、あたし。探偵には向かん。

アストリッドにそそのかされてから王子の弱味を探るべく、彼の動向を見張っていた私だったけど、ことごとく、後ろにも目があるんちゃうかというくらい気配に聰いアレイストが必ずこちらを見つけて、嬉々として話しかけてくる、それが続いている。

 あかん。このミッションはどう考えても失敗や。
 ていうか逆効果。
 弱味を握ってアレイストを遠ざけるどころか、めちゃめちゃ接近しとるやん!!
 アスタのあほ、いらんこと思いつきよって!

どこからだか殺意を秘めた視線が私に向けられている……!(しかも一つではない)

「……ね? ミツキ?」
「は? はい??」

殺意光線に気を取られ、早口で囁かれたアレイストの言葉が聞き取れず、あいまいに返事をすると、ニコリと全開悩殺スマイルを奴は浮かべた。

「よかった。授業が終わったあと、カフェテリアで待ち合わせしようか。そうそう、好き嫌いはなかったよね」
「へ? は?」

 なんの話だ。
 待ち合わせ???

「じゃあまた後で」

 ンギャッ!!

さりげなく顔を寄せた奴は私がキョトンポカーンとしてる間に、またしてもほっぺチューを………!!

映画スターのように手を振って去る姿も絵になるアレイストを、ジトリと睨みつつ、私は今さっき言われた言葉を必死に思い出していた。


*前目次次#
しおりを挟む
PC TOPmobile TOP
Copyright(c) 2007-2019 Mitsukisiki all rights reserved.

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -