むかし、むかしのことでした


連れ立って図書館に行くと、司書さんと話しているロルフと目が合った。

 実はさっきまでしっかり護衛されとりました。
 いつの間に先回りしたんやろ。

アレイストの、校内でも一人にするなという命令を忠実に守る彼は、時には友人面してピッタリと、時には隠密のように影から私を護衛している。
アスタの手が空いとるときはアスタが。

 何とかならんのやろか。
 もうすぐ冬期休暇や言うても、二人に負担かけんのは本意やないし。(アレイストは大迷惑の親玉やから、どんだけ世話になっても気にせんけどな!)

リーリィが一緒にいるからだろう、こちらを確認しただけで、側には来ない。始終ベッタリ張り付いて、他者を寄せ付けようとはしないアレイストとは違って、アスタやロルフはある程度私を自由にしてくれている。

 ヤツがいないうちに、少しでも新しい友人と仲良くなっておこうと私は俄然はりきった。
 帰ってきたら邪魔されるんは目に見えとるからな。

かわゆいリーリィは片想いの相手のことを話したりして、つかの間私を普通の女子高生気分に浸らせてくれる。

「まあ、勉強のために童話を? それならわたくし、お薦めしたいお話がありましてよ」

ミツキさんはどんな物をお読みになるのという問いかけに、現在文法と言語の習得に、子供向けの本を片っ端から読んでいると答えると、あくまでも上品なリーリィはどこかのボクちゃんのようにこのお子様めとバカにしたりせず、そんなことを言ってくれる。

「ご存じかしら、この国に昔から伝わるおとぎ話ですの。アレイスト様の花嫁となられるのなら、是非一度目を通されるとよろしいわ」

リーリィは、こちらにありますのと微笑みながら、書架の奥へ私を促す。

いや嫁にはなりませんよー、と無駄なツッコミを心の中でしつつ、そんな曰くのあるおとぎ話なんぞ今までうちの城の誰も教えてくれなかったぞと、ふと疑問に思った。

最近、何故か勝手に私の教育係と自己任命しているような、知ったかぶりで小姑みたいなボクちゃんさえも。

そんな話があるのなら、「このようなことも知らないのか!」なんて鬼の首を取ったみたいに、嬉々として事細かく聞いてないことまで教えてきそうなのに。


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