いつの間にか、当たり前の


「アレイストが帰ってくるの、明後日でした?」

私が課題をする横で、書類のファイリングをしていたロルフに訊ねる。

「ええ、予定では。どうなさったんですか?」

そう訊ね返されるのも当然か。

 この頃毎日一回は訊いてるような気がするもんな、アレイストの帰りいつやったっけ、てゆうの。
 何もド忘れしとるわけやあらへんで、ちゃんと覚えとる。

 覚えとるんやけど、ふとした瞬間に(アレ? 今日帰ってくる日やなかったっけ?)と思ってしまうのだ。

父親からすでに自分ちの領地の采配を任されてとるアレイストは、1ヶ月のうち数日を領地の見回りや訴えごとなんかを処理するために出掛けている。

領民が領主に訴えごと。
それを最初聞いたとき、いつの時代やーとか思ったんだけど、そう変なことでもないらしい。

 だいたい、治めなあかん領地があることにも庶民のあたしはビビるっつうの。
 まあ違う国やしな。影で吸血一族が暗躍しとる国やしな。

と、またも自分を無理矢理納得させる日々。

 もちろん普通に司法機関はあるのだが、アレイストのところに持ち込まれるのはそういうのとは別物らしい。
 ヤツも大変やな、学生はしなあかんし、学院代表も務めとるし、執事に任せとるゆうてもこの城の責任者やろ、しかも領地の管理のおまけ付き。

 さらに今現在イミューン(あたし)という面倒ごとを抱えて、そのせいで敵対する野郎共が心休まるはずの自宅にウロチョロしとる。

 ……他人事ながら(いや他人事ちゃうんか、最後のことに関しては)心配になってきたで。アイツいきなり倒れたりするんちゃうやろか。無駄にストレス溜めてそうやし。

そんなことをロルフに話して、

「アレイスト、無理してないかなとちょっと心配」

何気に呟くと、彼は目を瞬いたあと、堪えきれないように破顔した。

「そう思われるなら、帰宅されたときに労って差し上げてください。そうですねぇ、ミツキ様が頭のひとつでも撫でられたら上機嫌になるんじゃないですか、根は単純ですから」

ニコニコと、主を敬っているのかそうでないのか疑問を生じる発言をする。

「貴女からのキスでも有効ですよ、ていうか1ヶ月は寝ないで働くんじゃないですか」

それはいいな、一度検討してみましょうか。などと半分本気の顔をして頷いている。

 ……なあ、ロルフあんたホンマにアレイストの下僕なん?


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