奇跡を信じる?


「あれ、マリオさん、今から試合なんですか?」

私は観客席から立ち上がったマリオさんを見て、尋ねた。マリオさんは帽子をくるくるさせて、また被ると私の方を見た。
マリオさんはくすっと笑ってこう返した。

「そうだね、僕はこれから試合だ」
「じゃあ、応援しますね」
「ありがとう。ところでななし」
「なんでしょう」
「君は奇跡を信じるかい?」

マリオさんはそう言って真剣な眼差しになる。思わず真剣な眼差しにスン、と身がこわばる。
マリオさんはたまに冗談をいうけれどこんな風に真剣な顔で冗談を言うのは見たことがない。私は息を吸い込み、吐いてから答えた。

「もちろん、信じてますよ」
「本当かい?僕はこれから試合だけど、奇跡を起こしてみようとするよ」
「本当ですか?」
「まあ、これからの試合を見てくれ」

マリオさんはそう言って、観客席を去っていった。
マリオさんは奇跡を起こして見せる、とは言ったものの何が起こるのかいまいち想像つかない。
かといえ何が起こるとはわからないとはいえワクワクしている自分がいる。私は観客席の座席へ座った。




「あっ、マリオさん」
「やあ、ななし」

私は観客席から廊下へ歩いていると、マリオさんと出くわした。試合も終わったのだろう。マリオさんはタオルで汗を拭きながら水を飲んでいた。

「あの、今の試合、マリオさんの追い上げ、すごかったです」
「そうかな?最初は4位だったけどなんとか追い上げて結局2位さ」
「それでもすごいですよ!こんな追い上げ、早々ないですよ!」
「ありがとう、ななし。でも僕としては悔しいかな」

マリオさんが帽子を深く被りなおす。追い上げたとはいえ2位になってしまったのは納得いかなかったのだろう。
そんなマリオさんに「すいません」と謝る。マリオさんは気にせず、「別に君が気にすることじゃないよ」と諭した。

「さて、僕はもう試合はないし食堂へ行こうかな」
「あ、じゃあマスターに夕飯の連絡しますね」

私はそう言ってマスターに連絡を入れようとする。マリオさんはそんな私を一瞥した後、食堂へと歩き出すのだった。


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