風邪ひき


「バレンタイン、終わりましたね……ゲホッゲホッ」
「大丈夫か、ななし」
「うう、ありがとうございます、リヒターさん」

私は見舞いにきたリヒターさんに礼を言う。リヒターさんは「そんなことは気にするな」といって頭の上にあるおしぼりを絞り、また頭に乗せる。
バレンタインが終わり、私はすっかり油断していたのか、風邪をひいてしまった。
リヒターさんが来る前に他のファイター達もお見舞いに来てくれていた。中にはお見舞いの品を置いていった者もいた。
私は台に置かれているフルーツの籠を見る。

「しかし、皆さん、ただの風邪なのにお見舞いの品がすごいですね……」
「あまり無理をするな、ななし。まだ動ける状態じゃないだろう」
「リヒターさんも大げさですよ。ゴホッゴホッ」
「だから無理をするなと言っただろう!」

リヒターさんに怒鳴られてしまった。こればかりは申し訳なくなる。
と、リヒターさんは風呂おけを持って部屋を出て行ってしまった。水を変えてくれるのだろう。
私は1人、窓の外を眺めながらこう呟いた。

「もしこのまま治らなかったらどうしよう」
「それは困るな」
「わあ!し、シモンさん」

突然現れたシモンさんに驚いた。リヒターさんはまだ戻ってきていないのだ。
私は布団から起き上がる。シモンさんが「大丈夫か」と言ってきたが「大丈夫」と返しておいた。

「寝てなくても大丈夫なのか」
「は、はい。多分明日には立っていられるかと」
「そうか。それと、見舞いだ」

シモンさんはそう言って何かを取り出した。どうやら薬のようだ。
私が「どうしたんですか?」と聞くと、シモンさんは「Dr.マリオからだ」と短く答え、部屋を出て行ってしまった。
そして入れ替わりにリヒターさんが戻ってきた。水の他に冷えピタシートなるものを持っている。

「なあ、ななし。さっきご先祖さまが来てたけどなにかあったのか?」
「お見舞いに来てくれたんです」
「そうか。早く直るといいな」

リヒターさんがそういって少し笑った気がした。私もまた、笑い返すのだった。
翌日、風邪は完治したのだった。おそらくDr.マリオの薬のせいだろうか……と思いつつ、いつもの日常に戻るのだった。


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