長編 | ナノ

 第015夜 土翁と空夜のアリアF



造り変えたということは単なる腕の時よりも性能は上がっていることだろう。
アレンは武器を完全に造り変え、発射準備が出来たようだ。
腕を構え、アレンはアクマに向かってその銃を発射した。
意外なことに出てきたのは弾丸ではなく、槍のように細長い武器だった。ただの弾よりは殺傷能力は高いということだろう。これが対アクマ武器の進化というところか。
アレンはトッ!と自ら発射した武器を足場に着地した。


「そんなんで砂になってる私は壊せないよ〜」


アクマの生意気な口調に腹がたつ。突っ込んで参戦したくなるが、あんな殺気のアレンと共に戦うのは気が引ける。何者の干渉をも許さないような、そんな雰囲気だ。
アクマは自らの皮を砂にし、下に広がっている砂漠の中へと隠れている。
このままではアレンもさすがにまずいのではないか。


「ケケケ捕まえた!」


――あーあ…。
案の定、アレンは砂の中から出てきたアクマの体内へと閉じ込められてしまった。四の五の言っている場合ではない気がする。
私はトントンッ神田の肩を叩く。


「何だ」


何だじゃないだろう。
私はメモに書く。


*援護した方がよくない?*


このままにしてアレンがやられたら分が悪くなるのはこっちだ。
私も満足に動ける体ではない。…誰かさんのせいでな。


「…必要ない」


だが人の心配をよそに神田は言いきった。
この任務の間、神田は何一つとしてアレンやその時の状況を心配していないのではないのか。
今だってそんな余裕を感じさせる状況だとはとても思えないし、単純な神田に考えがあるとも思えない。


「何回刺したら死ぬかな〜」


そう言うとアクマはアレンが閉じ込められている砂の体へと武器を刺し始めた。
砂になっているアクマにダメージはないため、容赦なく体内のアレンを刺しまくる。
――あー、ホント容赦ない…


「ウォーカー殿――!!」


トマが叫ぶ。叫びたいのはこちらだって同じだ。
あれでは間違いなく本人は串刺しだろう。
だが、違和感が生まれる。
――殺気が…全く消えてない…。
禍々しい、あの嫌な殺気が。
次の瞬間、アレンが砂の中から出てきた。
驚くことに無傷だった。一体どんな避け方をしていたのだろう。
アレンは腕の銃口から先程発射していた、槍のような武器を出す。
しかし今度は発射するのではなく、剣としてアクマの砂の皮を切り裂いた。これで砂に適応する力は無くなり、隠れることは出来ない。今まで防ぎきっていたこちらの物理攻撃もしのぐことは出来ないだろう。
他のものを写しとられる前に仕留めなくてはならない。


「まだお前の腕が残ってるもんね!」


アクマは自分の能力によって写し取ったアレンの腕を出してくる。能力を無効化されたアクマの最終手段だろう。
アレンはそれに対して銃撃で応戦。
2つの攻撃が一気にぶつかり合い、空気の波乱が直に伝わってくる。
――……すごい…
目の前で起こっていることなのに別世界の出来事のような錯覚が生まれる。


「グゾルは…ララを愛していたんだ。許さない!!」


アレンは言った。
やはりアレンは2人を思っている。私のように復讐にかき乱された心もなく、ただ純粋にララとグゾルのことを思っている。それが少し羨ましく感じる。
アレンの銃撃は次第にアクマの持つアレンの腕を圧倒していく。


「何でだ!同じやつの手なのに…なんで負けそうなんだよぉ!!」


アクマが写し取ったアレンの腕はボロボロと崩れていく。
――…当たり前じゃん。
それが当然の結果であることは入団して間もない私でも分かる。
イノセンスを本当に使いこなせることが出来るのはその適合者だけ。真の使い手としてシンクロしているアレンが優勢に決まってる。
だがアレンの発動が突然解け、銃器が腕へと戻る。
――…何故!?
それだけじゃない。アレンが吐血している。どういうことだろう。
まさか武器の進化がアレンの体に負荷をかけているのか。体力がすり減っている今の体では武器の進化についていけないのも無理はない。
確か“リバウンド”といったか。


「もらった!!」


――やばっ…
アレンはしゃがみこんでしまい完全に無防備だ。
さすがにまずいと思い、神田に協力を煽ろうとするが、先程まで隣にいたはずの神田の姿が消えている。何処行った?
周りを見渡すと耳にキィン!と甲高い金属音が聞こえる。


『…!!』


アレンに襲い来るアクマの腕を神田が刀で受け止めていた。凄く意外で正直驚いた。任務遂行の邪魔だと判断した奴は見殺しにするのではなかったのか。
単純すぎるのか、いまいち掴めないやつだ、こいつ。
だが神田は鬼のような顔になってアレンに怒鳴り出す。


「この根性なしが…こんな土壇場でへばってんじゃねェよ!!あの2人を守るとかほざいてたのはテメェだろ!!」


アレンもわずかにビビってる。
助けてるくせにキレる…やはり掴めない。
神田はあれこれわめいていたが、アレンはケロッとして言う。


「ちょっと休憩していただけです」
「………いちいちムカつく奴だ」


神田は受け止めていたアクマの腕を切り落とした。どうやらとどめをさすらしい。
2人共元気ぶってはいるが、アレンはグダグダだし神田は止血したのに布に血が滲んでいる。
私も含めて体力もギリギリであるし、もうこれ以上長引かせるのはまずいだろう。
――…イノセンス発動!
私も2人と同様に発動し、ぐっと双燐を握る。こうなったら私も加勢してけりをつけるしかないだろう。
見るとアレンも再び発動している。強がっているとはいえ、リバウンドを起こしているその体ではこれ以上の発動とシンクロは危険。
ラストチャンスだ。
私は集中し、双燐を最高の9本に分裂させ、鎖を取り出す。
――あ…!
鎖を出したとき、ポケットからメモが一緒に落ちてしまった。それは深々と砂へ埋もれていく。
――…仕方ない。
会話の手段がなくなってしまったが、今はそれに構っている場合ではない。
私は諦めて双燐を鎖へと繋ぎ、第2形態にする。今の私がとどめをさすに最も適する方法。
神田とアレンが構えるのと同時に私は目一杯武器を引き下げ、飛び上がる。


「「消し飛べ!!」」


アレンは銃器を発射。
神田は刀を振り切り、私は鎖を勢いよく振り下ろした。




ゴオォォォォ!!




3人の攻撃がアクマへと直撃する。
皮を剥がされ、写し取ったアレンの腕を切断されたアクマは、成す術無く私達の攻撃をまともに食らった。


「エ…エクソシストがぁ〜〜〜〜〜!!」




ドォ!!




アクマは光に包まれ、そして散り、消えた。





第15夜end…



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