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例えば、自分の思い人がとても深刻そうな顔で黙り込んでいたとしたら。
男として放っておくわけにはいかないと、そう考えた大和はどうしたのかと声をかけた。
なまえは表情を変えないまま、静かな声で話し始める。
「大和くんが、絶対に倒れない男だっていうのは凄いことだと思うし、誇らしいことなんだけどね、そうなると一つ問題があるの」
「…問題?俺が倒れないことに?」
どこに問題があるのだろうと考えてみたところで答えは見えず、大和は首を傾げる。
重々しく頷いたなまえがどんなことを言うのかなんて、想像もつかなかったけれど。
「だって、それじゃあ私が大和くんを押し倒すことができないじゃない」
それを聞いた瞬間、大和は自然と引き締められていた顔に小さく笑みを浮かべて、彼女の肩に手を置いた。
見れば、彼の顔には既に特徴とも言える爽やかな笑顔がある。
「はは、そんなことなら問題ないさ。俺が君を押し倒せばいいだけのことだからね」
にっこり。
そんな顔でそんなことを言われると、赤面よりも先に脱力が身体を襲う。大和の白い歯がきらりと輝いた気がした。
もしかしたら失言だったのかもしれないとは思ったのだが、先刻までは真剣に悩んでいたのも事実で。
尤も、なまえが先の発言を色々と後悔することになるのは、もう少し先の話。
ヤマトタケルが倒せない
(え、ちょ、大和くん倒れ…っ!?)
(君が俺を倒せなくても、俺は君を倒すことができる)
(そういう問題じゃなぁー…っ!!)
fin.
09.1120.
ふざけすぎましたすみません
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