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「……っ、どうした、ジェダ?息が……上がって、るぞ…?」

「は…っ、るせェよ……!」

俺に組み敷かれても強気な笑みを浮かべるなまえは嫌に艶かしくて、強引にその唇を塞ぐ。こいつはそこらの女と違ってそう簡単には乱れない、いや、格好は充分に淫れてはいるが。汗ばんだ額や頬に張り付いた髪も声を上げまいと噛み締め時折熱い吐息を漏らす唇も生理的な涙に潤んだ瞳も上気し朱色に染まった頬も、俺の欲望を駆り立てるには十分すぎるくらいだ。

ただ、なまえのその心だけは高潔で、どうしても俺の手の届かない場所にあるらしい。身体と身体はこうして触れ合っているのに、何故触れられないんだろう。考えれば考えるだけ胸の奥に黒い感情が湧き上がり、こいつをこのまま俺の手で壊してしまいたい衝動に襲われる。そんな馬鹿な考えを掻き消すかのように、意識はなまえの声だけを聞いていた。


「……っく、ぅ……」

「声、聞かせて、くれよ……?」

「ひあ、ぁ……ッ」


びくりと身体を震わせ、なまえが達する。俺もやばくなったので、抜いてからその腹の上に白濁をぶち撒けた。下らない征服欲は満たされるはずもなく、ただ虚しさだけが込み上げてくる。俺は縋るようになまえの手を握った。


「なまえ、なまえ、好きだ、俺はお前を愛してる」

「………そう、か……」


虚ろな瞳は俺だけを映し、温かい手が頬に触れてくる。俺の言葉を、心を、受け止めてくれる気はないのか、それとも、嘘だと思っているのか。
頼むからその瞳に俺以外を映さないでくれ。柄にもなく、泣きたくなっちまうじゃねぇか。本心を隠すかのように、俺はなまえを強く抱き締めた。髪を撫でるその指が、酷く心地良い。寝台の上で、俺たちが一つになる錯覚に陥ってしまうほどに。




交わる影




心は永遠に、交わらない。


END


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