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(現パロ)
これは夢か否か、そう問われても、寝起きであるなまえは的確な答えを見つけ出せないでいた。
目を覚ましたら目の前に佐助がいて、おはようなんて言われても。夢か現実かなんて、即座に判断できるはずがない。出来るはずがないので、なまえはもう一度目を閉じることにした。
「ちょっ、なまえ。そこは起きるところでしょーが!」
「う……るさいなぁ、私まだ眠いんだって。寝かせてよ」
「冗談!もう午後の三時だよ?」
「時間どうこうの前に何で佐助が私の家にいるわけ。これ夢だからでしょ。夢で不法侵入を果たすとはおのれ佐助目覚めたらただじゃおかない」
「寝惚けも大概にね。合鍵持ってるんだから入れるのは当然でしょ」
何てリアルな夢、と呟きながら布団にもぐり込むなまえを、佐助は慌てて引き留めるが、さながら引きこもりのように布団を被ったなまえは出てきそうにもない。溜息を吐く佐助は仕方なしにその布団の横に腰を下ろし、彼女の感触を確かめるかのように布団の上に手を置いた。温かい体温が布越しに伝わってきて、少しだけ安心した。
「……なまえはよく寝るよなぁ…」
誰に言うでもなく零す佐助は、そのままでいいから聞いてね、と。ぽつりぽつり語り始める。
「俺様はさぁ、怖いんだよね。ほら、なまえって人並み以上によく寝るじゃない?起こすのも悪くてその寝顔見てるとさ、何だか普段は笑ったり怒ったりと賑やかななまえが不自然なくらい静かで……って、まぁ寝てるんだから当然なんだけども。……とにかく、そんななまえを見て、目覚めを待ってるのが、怖いんだ」
ちゃんと目覚めてくれるのか
俺様に笑いかけてくれるのか
目覚めたら別人になってるんじゃないか
あるいは
もう二度と目覚めないんじゃないか、なんて
馬鹿なことを考えてしまうんだ。
佐助が語ってる間、なまえは無言だった。身動ぎ一つせず、ただ呼吸に合わせて体が上下するだけで、起きてるのか寝ているのかもわからない。
佐助は苦笑を漏らすと同時に諦め、彼女の傍に寝転んだ。ここは大人しく目覚めを待つほかないと判断した結果だ。
隣になまえの存在を感じていれば、目を閉じて暗闇の中にいても全く怖くはないのだから。
佐助がうつらうつらと夢の中に引き込まれていった頃、後ろから抱き締めてくる腕があった。ああ、なまえの腕だと、まどろむ意識の中そう直感する。
私を夢の中から引き上げるのは、いつだって佐助の声なんだよ。
愛しい声で、そう囁かれた気がして。
なんだ、ちゃんと聞こえていたんじゃないか。
完全に覚醒するのも面倒なので、体だけ動かしてなまえを腕の中に閉じ込める。普段なら軽く抵抗するはずなのに今回は大人しい。少し怪訝に思うと、静かな寝息が聞こえてきた。
どうやら、また夢の中に逃げられてしまったようだ。
ドリーミンガール
愛しい彼女はいつでも夢の中
ねぇ、その中の俺様はちゃんと君を抱き締めているの?
END
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