高潔な彼の話をしよう
※骸受け・攻めのCPあり。腐多め。
雲骸 お題「さみしくなっちゃだめ」
部屋の隅で丸くなっている男に一歩近づくと睨まれた。全く呆れてしまう。 君なんてもう知らないと顔を伏せられた。数ヵ月ぶりに会う恋人にそんな台詞があるか。 構わず歩み寄り、屈んで柔らかな髪にキスを落とす。濡れた瞳が僕を見上げた。「さみしかったの?」でも今は僕がいるのだから寂しがっちゃ駄目。
ツナ骸 お題「愛してた」
追いかけて背後から抱きつく。どこに行くつもりだと怒鳴ると、別にどこにも、と渇いた返答。どうして俺から逃げるんだ。抱いた背が震えた。「もう君を愛するのは辛い」何故?その理由を教えてほしい。けれど骸は首を振る。 「でもこれだけは……確かに君を愛してた」 過去形の愛じゃあ何の意味もないよ。
骸ツナ お題「特別な想い」
黒い手袋に隠れた手。街中を歩いているときふと目についた。 「どうかしましたか」 骸は不思議そうに俺の視線の先の自分の手を見た。 「いや今日も手袋してるなと思って。お前って潔癖性なの?」 骸は苦笑した。 「そういうわけではありませんが、できるだけ他人との直接的な接触を避けたくて」 そう、と俺は下を向いた。思えば俺とこいつ恋人同士のはずなのに恋人繋ぎどころか手を繋いだことすらない。やり手そうな骸が何も仕掛けてこないのは他人の肌に触れたくないから、か。俺も触れたくない他人の一人なのだろうかと思うと悲しかった。 ふいに冷たい肌に手を握られた。驚いて見ると白い手と指が俺の手を緩く握っている。見上げた先には妖しげな微笑。 「もちろん君は特別です」 カッと頬が赤らむ。特別。骸が特別に俺だけに向けてくれる想い。嬉し恥ずかしい変な気分になって思わず奇声を上げてしまった。
骸と雲雀 お題「告白」
開け放たれた戸の向こうで彼は戸惑った様子で立っていた。僕は腰を上げぬままその姿を見つめる。淡い陽光に溶けて消えてしまいそうなほど儚い立ち姿。ゆっくりと唇が開く。慌てたように閉じる。焦れて、用件を問うと濡れた瞳を向けられた。また唇が開く。それは微かなけれど確かな愛情の一言。
骸と綱吉 お題「夜にしか会えない」
月の下、僕と彼は二人並んで歩いている。彼は屈託なく笑って夜空を指す。その先にはきらめく北斗七星。その他にも目を引く星の数々。世界は美しいものなんだと彼は語る。世界を恨む僕に綺麗なものを見ろと諭す。うまく頷き返せずにいる僕に彼は困ったように笑む。これはボンゴレによる夜限定の特別授業。
骸と髑髏 お題「だいじなもの」
骸様が私の大事なものだと伝えると彼は不可思議と言いたげな顔をした。 「僕のような人間が大事だとはお前も変わっていますね」 骸様は大事な人だけど私は貴方のそういう自虐的なところがあまり好きじゃない。 犬も千種もあなたのことが大事なのに。 「僕に大事なものなどない」 彼は言う。 「この手の全ては駒」
骸と“彼” お題「花火のように」
あなたがいなければ僕はずっとひとりで立っていられたのに。 あなたの――が僕をおかしくさせたのだ。 「散々僕を狂わせておいて……逃げる気ですか」 憎悪が爪先まで満ち満ちる。1秒もかからずひとつの生命が終わった。赤いものが靴の裏を潤す。まるで花火のような激しさ。そしてその後のような静けさだった。
六道骸 お題「正夢」
家族や友人を殺す夢を見た。なんて酷い夢。起き上がって服を着替え下に降りる。台所で母が笑い、リビングで妹が朝からはしゃいでる。顔を会わせるのを気まずく思った。トイレで用を足し出たとき見知らぬ少年が立っていた。赤い液が顔に飛び散っている。その手には父の生首。 「堕ちろ」 意識が白く弾けた。
おまけ(これより下はさらに以前twiterで書いたログです)
骸と雲雀
僕は退廃した欲望で出来上がったモノだ。情の入り込む隙などない。 骸はそう嘲笑った。俺はそれを聞いて微笑む。「そうか」自身をモノ呼ばわりする自虐は許せないけれど、彼のその硬質な肉体の内側が空っぽではないことにひとまずほっとした。
雲雀と綱吉 お題「うん、知ってる」
争いは嫌いだと少年は膝を抱えている。 俺はただ、みんなを守れればそれでいい。それだけでいいんです。 僕は彼を見下ろしながらうん、とだけ返した。無関心な自分の声。でも、と彼は続けた。 みんなを守るためにはみんなを傷つけるモノを壊さなければいけないんです。だけど俺はそれが堪らなく嫌なんです。 僕は少しだけ笑って、うん知ってると返す。彼は眼球だけ僕に向けてその飴色の瞳をそっと濡らした。
雲骸
優しくするなというから、言われたとおり暴力そのもののような行為をした。腿に爪を立てて足を開き、覆い被さって晒された喉に噛みつく。ギリギリと歯を食い込ませると快感に満ちた悲鳴。顔を上げてその顔を見下ろすと恍惚の色を満面に浮かべていた。僕はああこの男は本当に救われないと少し哀れんだ。
雲骸
汚してほしいと六道骸は笑った。腹の上に跨がりこちらの胸に両の手のひらを乗せて。 「汚してほしいって、たとえばどんなふうに」 その白い頬に手を添えて尋ねる。白い肌、きちりと整った服。その襟元を肌蹴て彼は笑みを深めて見せた。 「鮮血が弾け飛ぶように荒々しく、官能的に」
骸と綱吉
ソファに並んで座ってゆったりとした時間を過ごしていたときだ。 隣で本を読んでいた骸が突然寄りかかってきたかと思うと俺の肩に顎を乗せてきた。何も言わないし、それ以上何もしてこない。ただ顎を乗せてるだけ。 俺も何も言わなかった。 だってそれは素直になれない骸の唯一の甘えなのだから。
骸と綱吉
鳥のさえずりは、けっこううるさいものだ。人を眠りから覚まさせる程度には、やかましい。 夢も見ないほど深い眠りに落ちていた俺は、うっすら目を開く。瞼は案外軽く、気分はなかなかいい。二度寝するにはもったいない目覚めの良さだった。 枕元に置いた携帯を手にとって時間を確認すると、五時前だった。少なくともあと二時間は余裕で眠れる。 ねよっかな、と思いながら携帯を戻し、胸辺りまで下がっていた布団を引き上げたところで、なんとなしに隣で眠っている人間を見た。彼はこちらに身体を向けており、必然的にその寝顔も目に入った。 固く閉ざされた瞼はまるで死人のようで、見ていて気分が重くなる。元々やけに色の白いやつだったが薄闇の中ではもはや青ざめているかのようだ。 「骸」 布団の中に引っ込めていた手を伸ばして指先で頬をなぞった。なめらかな感触。感じた体温は俺よりずっと低いが、生を孕んだ熱が確かに無機質な白色の肌の下で息づいていた。 今度は大胆に手のひらで頬に触れてみた。俺の手、ちょっと寝汗をかいてしまっているかもしれない。まあ、いいか。 かすかな声を骸は漏らし、少しだけ頭を動かしたが瞼が開くことはなかった。 さらりとした黒髪を撫でる。その艶やかさは手のひらの神経に心地よく、俺は少しだけわらった。冷酷非情な一面を全面に出して闊歩するこの男の髪が寝ぐせ直しも不要なほどさらさらとしたものなのだと知る人間は果たして何人いるのやら。 眠気はやってこない。完全に目が覚めてしまったようだ。とはいっても二時間ものあいだをずっと骸にぺたぺた触って過ごすなんていくらなんでも不毛じゃあないだろうか。それに下手をすれば眠りこんでいる骸を起こしてしまいかねない。骸は自分の決めた時間以外に起こされるとすこぶる機嫌が悪くなってしまう。機嫌の悪くなった骸はかなり面倒だ。面倒だし、俺の減りやすい体力がいつも以上のスピードでなくなってしまう。 頬に触れたり、髪を撫でる程度ならまだセーフだけれどうっかり瞼を突っついたり肌に爪を立てたりすれば、その瞬間骸の意識は一気に浮上する。そしてあの赤い目が見開いてメデューサのごとく俺を睨みつけてくる。 いやだなぁ、骸の機嫌そこねるの。そう思いながら、俺は骸に触る手を止めない。
骸と綱吉
手首を握られ、細いと言われた。確かに先日の健康診断には痩せすぎと書かれていたが。 「そうかな、毎日三食食べてるんだけど」 呟くと骸は、 「その栄養分はどこに消えてるのでしょうね。まあ少なくとも背骨ではないか」 さりげない皮肉に気づき思わずムッと睨む。骸は笑い声を立てる。木漏れ日がゆらり優しく揺れた。
骸と綱吉
自覚がないなら言ってやる。お前の顔は大抵の女の子を恋に落とす、だが俺に対しては地獄に落とす効果がある。 そう指差して言うと男は黒革の手袋をはめた指を笑んだ唇に添えた。ほう、と嫌らしい笑い顔。嫌な顔。俺はまたも地獄に落とされる。 お前なんか嫌いだ。 何を言っても笑みは深まるばかりだ。
雲骸
小煩いその口を黙らせたかった。なら手で覆ってやればよかったのに、僕は何故自分の唇で彼の口を塞いだのだろう。 睫毛同士が触れ合いそうな近さで赤と蒼の瞳が信じられなさそうに揺れていた。押し返そうとする手を押さえて身体を壁に押しつける。顔を逸らそうとするのを後頭部に手をやって固定した。 間近の眦が歪む。呻く唇にさらに唇を押し当てて舌を這わせた。 暫しの間彼は抵抗を続けたがやがて薄く唇を開いて舌の侵入を許した。他人の唾液なんて気持ち悪いはずなのに夢中になって口づけた。一度唇を離し、宣告した。 「君を汚したい」 酔ったような顔で彼は頷いた。
(201405〜0801)
先日はパインの日だったということでたくさん短文を書きました。 ついでにいい機会だったのでtwiterで上げた140字短文を大体まとめてみました。 私なりの骸愛です。
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