『美坂家の秘め事』63
恋人とセフレ…。
兄妹の二人にとってはどちらもそう大差なかった。
どちらにしても世間的には胸を張って言える関係でない事ははっきりしている。
けれどさすが兄妹なのかお互いに心の中で思うこと同じだった。
(恋人の方がまだマシ!)
(セフレの方がいいに決まってる)
「家族なら問題ないだろ」
「どこが!?問題大有りでしょ!!」
拓弥のとんでもない発言に驚いた栞は裏返った声で叫んだ。
あまりに大声に拓弥は顔を顰めて耳を塞ぐ。
「兄妹で恋人とか…言われるよりマシだけど」
「なっ…そ、それは…拓兄が!!」
揚げ足を取られて栞はムッとした。
(話になんない…)
栞が体の向きを変えその場から去ろうとすると拓弥が腕を掴んで引き止めた。
「離して」
「まだ話が終わってない」
「拓兄と話す事なんてない!」
掴んでいただけの拓弥の手が栞を強く引き寄せた。
「ヤッ…!」
腕を振り解こうとして倒れそうになった栞を受け止めるとそのまま車に押し付けた。
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