『美坂家の秘め事』21

 激しく胸を上下させながら息をする栞をジワジワと追い詰める。

 休むことなく指が動くとクチュクチュと淫らな水音が響く。

「すっげぇ…ぐちょぐちょじゃん」

 拓弥は栞の耳元で囁いた。

 栞は飛びそうになっている体を繋ぎとめようと拓弥の肩に爪が食い込むとしがみ付いている。

「やだっ、拓兄ッ!怖い、怖いっ…」

 頭を激しく振りながら掠れた声で叫んでいる。

「栞、感じすぎー。ほら、イッちゃいなよ」

 これ以上激しくなる事はないと思っていた指がさらに激しく動く。

(やだ、やだ…イッた事なんかないのにっ…)

 エッチの経験は多くても本当のエクスタシーを感じた事は今まで一度もなかった。

 雑誌や友達との会話で知ってはいた。

 だから実際にエッチをする時はそれっぽく演じてきた栞。

「栞ん中すごいビクビクしてる。イキそうなんだろ?」

 拓弥はイかせようと言葉でも攻める。

「わ、分かんないもんっ!」

 栞が叫ぶように本音を口にした。

「へっ?」

 拓弥がポカンとして手が止まる。

 涙を流しながら肩で激しく息をする栞が拓弥を見上げる。

 童女のように頼りない表情で息も絶え絶えの栞が小さく呟いた。

「イクって分かんない…」

「え?嘘、お前…イッた事ないの?」

 さすがに拓弥も呆然として聞き返した。

 栞が小さく頷いた。

 拓弥は何も言わず黙ったまま妙な沈黙が過ぎていった。

(もしかして引いてる?あんな生意気な事言ってて呆れてる?)

 栞は顔を上げることも出来ない。

「じゃあ、潮吹いた事もあるわけないよな?」

 ようやく口を開いた拓弥が確認するように聞くと栞は頷いた。

 そして再び黙ったかと思うと中に入ったままの指が動き始めた。

「俺が教えてやるよ。本当のセックスってやつをな」

 俄然やる気が出てきた拓弥はそう言うと激しい愛撫を再開した。

(本当のセックス?)

 再び激しい官能の海へと飲み込まれていく栞は頭の中でぼんやりと拓弥の言葉を繰り返した。


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