『美坂家の秘め事』11
「じゃあ一回だけ、だからね?」
栞は念を押すように拓弥に返事をした。
本当はまだ心の中では迷っていたけれど拓弥のモノに触れて自分の中にある本能に逆らえなかった。
「よしっ!」
拓弥は嬉しそうにガッツポーズをした。
それを見た栞は少々不安になりながらため息を零した。
「で、ココでする?」
「はぃ!?」
拓弥の無謀とも思える発言に栞は声を裏返しながら聞き返した。
「いやシチュエーション的に燃えるかなぁと思って」
「ありえないでしょ」
「絶対燃えると思うんだけどなぁ」
拓弥は心底残念そうに呟いた。
「じゃあ2階行くか、俺の部屋にする?」
「それでいいよ」
あっさりと場所を決めて二人は立ち上がった。
拓弥が栞の方を向いて手を差し出している。
栞はその手を見て何?と視線を投げかけた。
「ムード大事じゃん。栞の事金で買ったわけじゃないし」
(拓兄なりの配慮?)
そう思うことにして栞は拓弥の手を取ると二人は手を繋いで子供部屋がある2階へと上がっていった。
2階へと続く螺旋階段を上がっていくと中央にちょっとしたスペースがありそこを囲むように4つの部屋がある。
一人ずつ割り当てられた部屋だ。
拓弥はドアに『TAKU』とプレートが下げられた部屋へ入った。
拓弥の部屋は4人の中で一番シンプルで一番広く感じる。
机にベッド、本棚にAVボードがあり部屋の中央にはいかにも座り心地の良さそうな革張りの一人用のソファが置いてある。
余分な物は何一つ置いていなかった。
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