『美坂家の秘め事』93
「拓兄ーグレープフルーツと梅どっちがいーの?」
「梅くれる?」
優弥が二本差し出すと拓弥は梅を受け取った。
そして残った一本を栞に向かって差し出す。
「しーちゃん、グレープフルーツでいい?」
だが栞はまだボーッとしていたせいか優弥の言葉は届いていなかった。
「しーちゃん?」
優弥が栞の肩を叩く。
「エッ?」
「あれぇ?しーちゃん顔赤くない?」
優弥は慌てて顔を上げた栞をジッと見つめた。
(ヤバイッ…)
すぐに顔に出てしまう栞は火照る頬がなかなか戻らなかった。
「栞はもう酔ってるみたいだからいらないみたいだね?」
拓弥が助け舟を出す。
「もう酔っちゃったの?」
「あ…う、うん…」
「じゃあお水にする?」
栞の事が大好きな優弥は心配そうな顔をして甲斐甲斐しく世話を焼く。
優弥が小走りで持ってきた水を受け取りながら栞は心の中でため息を吐いた。
(これじゃあ先が思いやられるよぉ〜)
栞と拓弥のセフレ生活は波乱含みの幕開けとなった。
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