女々しい俺の恋 【2】

 週末の居酒屋は仕事帰りの社会人や大学生のグループで埋まりあちこちで大きな声がしていた。

 今俺がいるテーブルもその例外ではない。

「だいたいね!アイツもアイツだと思わなーい?」

 もう何杯ビールを飲んだか途中から数えるのも面倒になった。

 大量に酒を煽ってそしてその勢いのまま大声で管を巻いている。

「私と約束してるのにー他の女を連れ込んでーやっちゃってるんだよ!」

 あぁ…女がやっちゃってるなんて言葉を大声で叫ぶなよ。

「上に乗って必死に腰動かしてんのー!その必死な顔ったらほんと間抜け!」

 だからさ…お前も女だったらもうちょっと言葉の使い方とか恥らい方とかあるんだろうよ。

「でー私のぉー顔見た時のあのビビり方ったらぁー」

 俺は隣にいる高校時代からの友達の亘の方を見てため息を吐くと亘もまた力なく首を横に振った。

「ねぇ…愛ちゃん飲みすぎ…」

 同じく友人の千里ちゃんは心配そうな顔をして愛ちゃんの手からグラスを取ろうとしている。

 俺と亘とそして愛ちゃんと大学で仲良くなった千里ちゃんの四人は社会人になった今でも月に何度か集まってはくだらない話をしている。

「ねーナルちゃんもそう思うでしょー?」

 そう思うってその話のどこに俺は共感すればいいんだよ。

 必死に腰を動かしてる間抜けな顔か?

「ほんとそうだなー。そんないヒドイ男別れちゃえばいいだろー」

 適当に話に相槌を打ちながらさりげなく別れをそそのかす。

 だいたい彼女がいるのに他の女を部屋に連れ込む男にすがり付く愛ちゃんの気持ちが理解出来ない。

 目の前で酒を煽りながら愚痴を零しているこの女はそれでも別れたくないといつも泣く。

「でもぉーだってぇー好きなんだもぉぉん」

 大きな声を出して両目から涙を零すとそのままテーブルの上に突っ伏した。

 テーブルの上の皿やグラスがガチャガチャと大きな音を立てると店員が飛んで来た。

 ほら、やっぱり泣いた。

 昔っからそうだ。

 周りを見ないで自分の気持ちに振り回されて傷ついて泣いてそして俺を振り回す。

 あの時だって…。
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