女々しい俺の恋 【1】

 出会いは中二の春。

 暖かい陽射しが入る教室で黒板の前に立って緊張しながら挨拶をした俺。

 教室の真ん中辺りで友達とこそこそ話をしていたアイツ。

 まだ幼さの残るふっくらとした顔で額に出来たニキビを気にしていたのかしきに前髪を弄っていた。

 それから偶然にも同じ高校に進学しさらに偶然にも大学も同じだった。

 そして今、就職した会社は違えどお互い住んでいるアパートは歩いて10分も掛からない距離にある。

 周りの人間はそれを『くされ縁』と呼ぶ。

 だいたいただの同級生が同じ高校へ進学し大学を卒業して近くに住むという事を『くされ縁』なんて言葉で片付けられるわけがない。

 10年も一緒に居て俺達の呼ばれ方は『親友』ではなく『くされ縁』仕方がない事だと分かっている。

 だって俺は男でアイツは女。

 俺は『くされ縁』と思った事は一度もない。
 
 だって俺はあの中二の春の時から何も気持ちは変わっていない。

 ましてや『親友』なんて言葉にしたくない。

 離れようとしても離れられない関係を『くされ縁』と呼ぶのならまだその方がましだ。

 偶然と思われていた事の全ては偶然なんかじゃなくて…俺が選んだ道。

 本当はこれが二人の運命だなんて格好いいセリフを口にしてみたい。

 そんな事が出来れば10年もこんな事をやっているわけがない事は重々承知している。

 俺は女々しいんだ。

 意気地がないんだ。

 だから今もこんな風に『くされ縁』の俺をやっている。
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