【1】

 今年の夏は暑かった。

 うだるような暑さの中、夏休みで暇な私は毎日のように姪っ子の遊び相手をさせられた。

「奈緒おねーちゃん、プール行こうよー」

 小学二年になる姪っ子の里桜(りお)ちゃん。

「おねーちゃんは、勉強で忙しいんだよ。ごめんねー」

 テレビの前で扇風機に当たりながら答える。

それでも一応テーブルの上には宿題が広げて置いてある。

「嘘つきー!ママに言っちゃうからねー」

 ウワァーンと泣き真似をして電話に手を伸ばす里桜を慌てて引っ張った。

「ごめんごめん、プール一緒に行こう!ね?」

 そんな私を見て里桜はにこっと笑って水着に着替えに行った。

 里桜のママは私の7歳年上のお姉ちゃんでシングルマザー。

 実家で一緒に生活をしていて私にとっては親よりも怖い存在。

 何をしても敵わないというか…憧れというか…。

 高校を卒業してすぐ子供が出来たと分かった時も両親にはっきりと産むと言ったお姉ちゃん。

 相手の人はよく分からないけど、産んで育てたいから協力して欲しいと潔く頭を下げた姿をまだ小さかった私は子供ながらにかっこいいと思った。

「奈緒おねーちゃん!準備できたー?」

 玄関で大きな声がして私は急いで日焼け止めを塗って玄関へ向った。

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