夏 【2】
プールと言っても大きなスライダーや流れるプールなんかあるわけがない。
そこは家の近くの小学校のプール。
太陽がギラギラと照りつける中子供達はプールの中で楽しそうにはしゃいでいるけど…。
周りで見ている付き添いの大人達の辛そうな顔…。
そりゃそうだよ。
こんな暑さの中でいくら屋根があるからってコンクリートの照り返しがあってとにかく暑い。
でも子供達のはしゃぎ声に交じって元気男の人の声が聞こえる。
「おーい!おまえら潜るなって言ってるだろー!」
黄色いTシャツを着て麦わら帽子を被った人達。
夏の間だけの臨時アルバイトのプールの監視員の人。
たぶん見た感じは大学生な。
小学生とそのママさんやパパさんしか居ないプールでは私にとってはちょっとした楽しみ。
その中でも1人すっごいかっこいい人がいる!
名前は他の人が呼んでるのを聞こえて"コウタ"って事は分かったけどそれ以外の事は全然分からない。
「里桜ちゃん、また黒くなったなぁ?」
プールサイドを歩く私達に近寄って話し掛けるその人がコウタさん。
「お兄ちゃんの方が真っ黒だよー」
屈託のない笑顔でペタペタと腕を触りながら話が出来る子供が羨ましい!
私もお話したいのにっ!
「奈緒おねーちゃん、浮き輪ー」
「はいはい、気をつけてね」
持っていた浮き輪をせがまれて上からスポッと被せると嬉しそうに十分足が付く深さのプールへと入って行った。
プールに浮かぶ里桜に手を振ってるとまだ隣にコウタさんが立っている事に気が付いた。
何か話した方がいいかな…?
「里桜ちゃんのお姉さん?」
わわわ…話し掛けられちゃったー。
「い、いえ…姉の子供で…」
恥ずかしくってずっと里桜に視線を合わせたまま答えた。
「夏休みで子守のバイトかぁ?頑張れよぉ〜」
頭の上にポンと手が置かれてびっくりして顔を上げるとコウタさんと目が合った。
真っ黒に焼けた肌少し長めの茶髪にピアスをしている。
うわぁこんな近くで見たの初めて…。
クラクラッ目眩がしたのは暑さのせいかコウタさんの笑顔のせいなのかよく分からなかった。
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