女々しい俺の恋 【16】
「お前飲みすぎなんだよ!」
俺は亘に支えられながらやっとの思いで自分のアパートのベッドまで辿りついた。
「明日も仕事だろ?平日にこんなになるまで飲む奴があるか」
「お前が飲まないから俺が代わりにぃー」
「俺は飲まないんじゃなくて酒に弱くて飲めないの!つーか車だから飲めるわけねぇだろ」
亘は俺のスーツを脱がしてそれをハンガーに掛けてくれている。
俺はベッドの上に横になりながらボーッと眺めていた。
「亘は優しいよな。女にもモテるし…女の扱い方も上手いし羨ましいよ」
「何、言ってんだよ。ナルだってモテんだろ?お前の場合は愛ちゃん以外の女に目を向けないから気付かねぇだけだって」
今度は台所からグラスに水を入れて持って来てテーブルの上に置くと床に散らかった物をどけで座るスペースを見つけている。
「俺も本当にバカだったよ。10年だよ10年。一人の女思い続けて、今になって本人からただの友達って言われて落ち込むなんてな」
俺が自嘲気味に笑いながら緩めたネクタイを外してそのまま床に落とすと亘は拾って丁寧に掛けてくれている。
「確かにバカだよなぁって思ってたけど、俺さぁ最近になってナルの気持ちがすげぇ分かるよ」
俺は亘の意外な言葉に驚いて体を起こした。
「だってさぁ10年も思い続けられるくらい愛ちゃんの事好きなんだろ?それなのに彼氏の愚痴もノロケも全部受け止めて慰めて…ずっと俺はそんな恋愛は面倒って思ってたけどさ」
ネクタイを掛けた亘は俺に水の入ったグラスを手渡してからまた床に座り込むとクシャッと自分の髪を掴んだ。
「どんな形でもいいから側に居たいって思う事もあるんだな」
「亘…お前もしかして…」
恋愛なんて楽しければおっけー!みたいな事を実践していたような奴だったのに…。
「まぁ、俺の話はいいじゃん!今日はもう寮に帰るの面倒だし、ここで寝てくぞー」
照れくささを隠すように立ち上がった亘はバスルームへと消えて行った。
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