女々しい俺の恋 【15】
あれからどのくらいの時間ここに座ったままいたんだろう。
すっかり真っ暗になって人通りも少なくなってきている。
やべぇ…涙出そう。
そう思うと俺は携帯を取り出して電話を掛けた。
「あー俺…今時間ある?…うん。今、駅前」
手短に電話を終わらして携帯を閉じるとそのまま目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのはさっきの悲しそうに笑った桐谷さんの顔と走って行った後ろ姿、それと…いつもの明るい笑顔の愛ちゃん。
やべぇ…ほんとに泣きそう。
涙が出そうになってギュッときつく目を閉じるとプワァンとクラクションの音が聞こえて立ち上がった。
「ごめん、用事とかなかった?」
助手席に乗り込むと運転席に座る亘は少し不機嫌な顔をしながらこっちを見た。
「あったけどナルのあんな声聞いたら断れないだろ、それに俺の方は会えるかどうかも分からないから別にいーよ。」
「もしかして彼女出来たの?」
「まだ彼女じゃねぇって…」
「なんか…悪ぃな」
「いいって、俺も今日は一人で部屋にいるのはきつかったりするから」
そう呟いた亘の横顔がすごく辛そうに見えたけれどやはりそれを気に掛けてやるほどの余裕はどこにもなかった。
「で?これからどうする?飯食いに行く?」
「あぁ…そうだね」
こんな時の男友達はいい。
何も話さなくてもこうやって一緒に飯を食ったり酒を飲んだりするだけで何となく救ってくれるような気がする。
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