女々しい俺の恋 【14】
何だろう…すごく悲しいはずなのに涙も出てこない。
というより心が何も感じていない。
はっきりと言われた。
ただの友達、くされ縁、そんな事は分かっていたけれど好きな相手から聞くのは一番辛い。
「ごめんねー、あいつ昔から空気読めない奴なんだ」
俺どうして笑ってるんだろう、どうして笑えるんだろう。
「あ…いえ、ちょっとびっくりしたけど…中学からのお友達だなんて羨ましいです」
羨ましいか…ハハハ…本当の友達ならそうかもな。
「それで、あのぉ…」
照れくさそうにしている桐谷さんにすっかりどっかにいってしまった出来事をようやく思い出した。
けれど今の俺には続きを促してあげる程の余裕はこれっぽちもない。
「入社した時から水口さんが好きです」
さっきみたいな胸の高まりはもう起きなかった。
変に頭の中が冷静で実は男よりも女の方が潔くで度胸があるんだな…なんて思った。
俺にもこんな潔さがあればさっきみたいな場面に出くわしても上手く切り抜けられたかもしれない。
それよりも俺たちの関係はとっくに結論が出ていたかもしれない。
「水口さん…」
「あっ…」
明らかに返事を待っている顔、いい返事を期待している仕草…。
確かに桐谷さんは無条件に可愛い。
華奢で小さな体は守ってあげたくなるように可愛らしい、声も可愛い、きっと居酒屋で飲んで酔い潰れるなんて事もないだろう。
男ならこんな子から告白されて断る奴いるわけないよね。
「ありがとね。でも俺好きな子がいるんだ…」
あーまた亘にバカって言われるなぁなんて思いながら俺は桐谷さんに頭を下げた。
「あ、いえ…すみません、変な事言ってごめんなさいっ」
桐谷さんはきっとこんな答え予想していなかったかもしれない。
悲しそうな顔をして立ち上がると俺に頭を下げる。
「俺の方こそ…応えてあげられなくてごめん」
「い、いえっ!気持ちを伝えられただけでも良かったです!それじゃあ失礼します」
桐谷さんは走ってあっという間に改札の向こうへと消えて行った。
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