女々しい俺の恋 【8】

 結構時間掛かったな…駅に着くともう23時を回っている。

 今からじゃ遅いかなと思いつつも携帯をポケットから取り出した。

 明日は休みだし少しくらい遅くても大丈夫だよな。

 それに少しでも早く愛ちゃんの喜ぶ顔が見たい。

 そう思いながら愛ちゃんの番号を呼び出して発信ボタンを押して携帯を耳に当てると聞き覚えのある声がした。

「ごちそうさまぁ」

 目に飛び込んできた光景に俺は携帯を持っていた手をだらりと下ろして電話を切った。

 まだ、帰ってなかったんだ。

 タクシーから降りて来たのはかわいいピンクのワンピースを来た愛ちゃん。

 タクシーの中には年上っぽくていかにもイケメンの男。

「愛ちゃん、本当にこんな所でいいの?家まで送るのに」

「ううん、全然大丈夫ですよっ!おやすみなさーい」

 紙袋を持っていた手に思わずと力が入った。

 俺…何やってんだろ。

 それから俺は声も掛けず愛ちゃんの部屋にも寄らず真っ直ぐ自分のアパートへと帰った。

 愛ちゃんへのお土産がたくさん詰まった紙袋は玄関に置きっぱなしにして俺はスーツのままベッドに転がった。

 どうしようもなく涙が出て来る。

 真っ暗な部屋で誰にも見られていない安心感からか俺は涙を拭う事なく思いっきり泣いた。

 正直もうこの辺が潮時なのかもしれない。

 気持ちを打ち明ける事は何度も考えた。

 それでも拒否された後の事を考えるととても実行に移すことは出来ないくてそれならこのまま『くされ縁』でもいいと思ってた。

 そうやって10年側にいたけれどそれももう限界だ。

 これから先もあんな場面を見るたびにこんなに胸が締め付けられるのならいっその事気持ちを打ち明けて拒否された方がましだ。

「でも…愛ちゃん」

 簡単に気持ちが決まるほど俺の10年は軽い物じゃなかった…。
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