女々しい俺の恋 【7】

 俺ってやっぱりバカな男かもしれないな。

 そうぼやく俺に亘はいつもバカかもじゃなくてバカなんだよと笑う。

 もうすぐ10時かぁ…あいつ帰って来てるかな。

 携帯の電源を入れると会社からの留守電だけで少しがっかりしながら隣に置いた紙袋に視線を移した。

 駅に着いてから電話すればいっか…携帯を閉じるとそのままスーツのポケットに押し込む。

 俺はバカの証が詰まった袋を持ち上げて歩き始めた。

 一週間前のこと。

 珍しく愛ちゃんが料理を俺にご馳走してくれるという事で愛ちゃんのアパートに行った時の事。

「俺ね、来週出張でいないんだ」

 あまり料理が上手じゃない愛ちゃんが作ったのは定番の肉じゃがだった。

 味のしない肉じゃがと崩れた豆腐の入った味噌汁。

 それでも俺にとってはどんな料亭の味よりもおいしいと思えた。

「へーどこ行くの?」

「福岡」

「福岡かぁ…じゃあ明太子買ってきて!それとぉ…かるかん?」

「かるかんって鹿児島じゃなかったっけ」

 そうだっけ?と言いながら次々と福岡名物正しくは九州名物をどんどん口にしている。

 ねぇ愛ちゃん、ちゃんと俺の話聞いてた?

 一週間居ないんだよ?

 彼氏でもないから出張先から電話とかメールとかそういう事するのもおかしいんだよ。

 寂しいって思ってくれないのかな。

「じゃあ…何か欲しい物があったら電話するね!」

 そう言われて俺は福岡出張へと旅立ちそして今日帰って来た。

 一週間の間に愛ちゃんから電話はなかったあったのはメールが一回だけ。

【カステラ食べたいっす】

 それも福岡土産じゃないよね…なんて思ってたけれど袋の中には土産物売り場のおばちゃんが一番美味しいと言ったカステラが入っている。

 俺ってやっぱりバカだな。

 それでも俺は愛ちゃんの目をまん丸にしながら喜ぶ顔を思い浮かべて幸せな気持ちになりながら家路を急いだ。
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