女々しい俺の恋 【6】
酔い潰れた愛ちゃんを背負って店の外に出た。
「ナル、大丈夫か?」
「これ…愛ちゃんのバッグ」
千里ちゃんが俺の首に愛ちゃんのバッグを掛けてくれる。
「大丈夫だよ慣れてるし。亘、千里ちゃんの事ちゃんと送ってけよ」
「おぉ、それは分かってるけど…」
複雑な表情の亘は俺の側に来ると小さな声で呟いた。
「俺はお前の方が心配だよ…」
「ばーか大丈夫だよ。送り狼なんかにならないって」
「いや、そうじゃねぇって…」
亘はまだ何か言いたそうな顔をしているけれど俺は二人に別れを告げて歩き始めた。
亘、ごめんな。
お前が心配してくれる気持ちは十分分かってるよ。
愛ちゃんの奔放な恋愛も知っていてしかも俺のこの気持ちも知っている亘がすごく歯痒い気持ちでいる事は痛い程分かっている。
「ん…やっちゃ…って…」
酔い潰れた愛ちゃんは俺の背中で寝言のようにブツブツと言っている。
アパートに近い居酒屋にして正解だった。
15分くらいなら愛ちゃんを背負って帰る事が出来る。
こんな事は今までに一度や二度じゃない。
男と何かある度に酒に付き合わされて大酒を飲み管を巻き泣いて酔い潰れた愛ちゃんを俺はいつも背負ってアパートまで連れ帰っている。
「俺みたいな男他にはいないんだよ、分かってる?」
「んー」
何か言われたから声を出したような返事をしている。
ズルズル落ちそうになる愛ちゃんの体を何度も背負い直しながら背中に感じる愛ちゃんの体の感触に自然と体が前屈みになる。
「あと…どのくらいこうしていられるかな」
愛ちゃんが俺の気持ちに気付くまで?
それとも…俺が愛ちゃんを諦めるまで?
10年も想って来て今更そんな弱気な自分に自分で笑いながらもそんな迷いを断ち切るように大きく頭を振った。
ずり落ちそうな愛ちゃんの体を勢い良く背負いなおした。
「愛ちゃん…もうちょっと痩せてね」
「んー」
またとりあえずの返事が返って来るのが聞こえて来た。
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