女々しい俺の恋 【5】
それから暫くして目をパンパンに腫らして鼻を真っ赤にしながらティッシュの箱を抱えている愛ちゃんが俺の部屋に居た。
「せ、先輩がぁ…」
白いティッシュの塊はすでにゴミ箱から溢れそうになっていた。
まだまだ増えそうな勢いで愛ちゃんの話に耳を傾けながら新しいのを持ってきた方がいいかも…なんて変な心配をしていた。
しゃくりあげながら時々大きな声で喚きながら俺に話してくれた事を要約するとこうだ。
先輩と初エッチをしたけれどそれから急に先輩の態度が冷たくなって連絡が取れなくなった。
先輩の家に行ったら女の子が出て来てその場でふられた。
たぶんその男の気持ちとしてはちょっと遊んだだけのつもりなんだろうけど…。
愛ちゃんはもちろん初めてをその男にあげる覚悟をして泊まりに行ったわけだからすごい好きだったんだろうな。
「私のどこがいけなかったのかなぁ…」
グスグスと鼻を啜りながら肩を震わしている。
その姿を見ていると抱きしめそうになり思わず手が伸びた。
けれどそのまま抱きしめる勇気もなく行き場を失った手はそのまま自分の頭を掻いた。
「愛ちゃんはそのままでいいと思うよ」
これは本当に俺の本心。
今のままで十分可愛い色んな事に一生懸命でコロコロ表情が変わって見ていてこっちまで楽しくなる。
「ほんとに?」
顔を上げると真っ赤にした目で上目遣いで見られて俺はゴクンと唾を飲み込んだ。
体全体が心臓になったみたいにドクンドクンと大きな音がする。
この音が愛ちゃんにも聞こえているんじゃないかと思う程だ。
「う、うん…。先輩は見る目なかったんだよ」
「ありがと。ナルちゃんに話したら元気出て来たぁ!今度はもっといい人探すからナルちゃんも応援してね!」
俺ってバカじゃんね、元気付けて励ましてどうすんの。
経験の少ない…いやほとんどない俺にはこういうチャンスをどう物にしていいのか分からない。
ねぇ…愛ちゃん、俺じゃダメなのかな。
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