『番外編』
節分2010【3】

 祐二の抵抗はいつの間にか止んでいた。

 俺を押し返していたはずの手は縋るように俺のシャツを掴んでいる。

 頬を上気させ瞳を潤ませ乱れた息をしているくせに、それでも何とか優位に立とうと瞳に勝気な色を浮かばせた。

「そこ……ばっか……舐めんなっ」

 今度は反対側を口に含んでいた俺に唇で甘噛みしていたのを止めて顔を上げた。

 今だ緩められていないベルト、ズボンの中がかなり窮屈そうになっていることには気づいているけれどあえて知らないフリをしていた。

「丸かぶりはダメなんでしょ?」

 自分も大概意地悪だなと思いながら濡れてやらしさを増した小さな尖りを舐め上げた。

「んんぅっ」

「お……お前がっ、そ……いう言い方するから、だろっ」

「違う言い方ならいいんだ?」

「……ッ」

「何て言えば良かった? 教えてよ」

 もう押さえつける必要がなくなった祐二の身体、自由になった手で半開きの祐二の唇に触れた。

 熱い吐息が人差し指の指先に掛かる。

 たったそれだけでも欲情してしまった俺は指をさらに奥へと進めた。

 クチュという濡れた音が指先から耳へと伝わる。

 奥へと進めただけの指先を舐める熱い舌、わずかに引けば追いかけることで偶然触れたことじゃないと分かった。

 どうしよう……すごい可愛い。

 瞼を伏せてまるで子猫がミルクを舐めるように柔らかい舌が指先を舐める。

 腰の甘く痺れる疼きを耐えながら指を前後に動かせば、咥え込む唇も絡みつく舌も場所は違うのでまるで同じように俺を誘う。

 いつだって……我慢できないのは俺の方なんだよね。

 ズボンの中身が窮屈なのは自分も同じ、先に根を上げたくないという気持ちだけで堪えているけれどそろそろ厳しくなってきた。

 前後に動かしていた指を何の前触れもなく引き抜くと祐二の口からため息のような声が零れた。

「もっと舐めたかった?」

「ち……違っ」

「今度はこっち。こっちも今みたいに上手に出来るよね?」

 逸る気持ちを抑えながらベルト緩めて前を開くと祐二の喉が上下に動き、それから俺の手元を見ていた祐二の瞳が自分の股間へと移される。

 ここでおねだりしてくれたら意地悪なんかしないで何度でも達かせてあげるのに……。

 甘い期待が伝わったのか祐二の視線がどこか媚びるように俺の顔を覗き込んだ。

「貴俊……」

 可愛いな……そこで「俺のも咥えて」とか「俺のもペロペロして」とか言ってくれたら迷わずしてあげるのに。

 ありえない想像をしてしまったおかげでズボンの中から自由になったばかりの自身がさらに硬さを増す。

「口開けて? 初めてじゃないからどうすればいいか分かるでしょ?」

 祐二の身体を跨いで口元に大きくなった自身を近付ける。

 さっき指を舐めてくれたみたいに、あの熱い舌で俺を溶かして欲しい。

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