『-one-』

温泉旅行! P8


 麻衣は一人で露天風呂の脱衣所にいた。

 混浴に一人で来たのは少し怖いけれどやはり露天風呂は外せないと心の中で陸に謝る。

 ふとさっきの会話を思い出した。

「先輩!何で行かないんですか?」

「私はいーよ。若い子だけで行っておいで?」

 麻衣ははっきり言って困っていた。

 後輩達がこれからホスト達と旅館内のバーで一緒に飲むと誘ってきた。

(そんな集まりに行けるわけがない…)

 いくら誠や悠斗に口止めしたところで向こうには陸がいる。

 麻衣がたとえ店のホストだと分かっていて飲みに参加しても「浮気した!」とばかりに怒るに決まっている。

「私は温泉入って来るよ!」

 と結局は逃げるしかなかった。


 カラカラカラと入り口の戸を開けると外は少し薄暗く湯気のせいかあまり視界は良くなかった。

(誰か入ってるかな?)

 見える範囲に人はいなかったが麻衣は念のため隅の方に入る。

「あ〜気持ちぃ〜」

 乳白色のお湯を手で掬って肩に掛けた。

(はぁ〜気持ちいなぁ…)

 暗い空を見上げながら陸の事を考えた。

 さっき悠斗達に会ったのに陸から何の連絡もない事が不思議で仕方が無い。

 普通だったら風呂とかで襲われててもおかしくないのに姿を現すどころか電話の一本もないのが陸らしくないなと麻衣は首をひねる。

(酔い潰れたのかな…)

 心配になった麻衣は風呂から出たらこっそり電話してみることにした。


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