『-one-』
温泉旅行! P5
フロントで受付をしてる誠を見つけると他の人に気付かれないようにそっと近づいた。
「ちょ、ちょっと」
小声で呼び離れたところまで引っ張って行く。
誠は麻衣の顔を見て目を丸くしている。
周りに誰も居ない事を確認すると麻衣は小声で話し始めた。
「なんでここにいるんですか?」
「陸から聞いてない?今日は泊まりで親睦会なんですよ」
「それは聞いてたけど、どうしてここなんですか…」
あんまり受け入れたくない事実に頭がクラクラした。
「麻衣さんは、何でここに?」
「えっと、それが…」
「あ、麻衣さ〜〜ん!!」
麻衣の言葉を遮るように遠くから手を振って呼びかける悠斗の姿。
(あちゃー見つかっちゃった)
麻衣はしまったぁと顔を伏せる。
悠斗が駆け寄って来た。
「何やってるんですか?」
目をランランと輝かせて麻衣の前に立つと麻衣はため息を吐いた。
「私は社員旅行で来てるから、どうか私の事は知らない振りで…」
さっきの言葉の続きを誠に伝えた。
「そう言う事ですか、分かりました」
誠は飲み込みが早く麻衣の事情を理解して快く承諾した。
「了解っす!」
悠斗もまた満面の笑みで任せろとばかりに胸を叩いている。
(いや…こんなに笑顔で返されると逆に怖いんですけど…)
「あ、えっと…陸は来てないのかな?」
一瞬、悠斗くんの動きが止まった。
(しまった…やっぱわざとらしかったかな?)
見渡しても陸の姿が見えない事に心配になってしまって思わず聞いてしまってまずかったかもしれないと後悔する。
「陸さんも来てますよ!呼んで来ます?」
「い、いい!そんな事しなくていいから!じゃ、じゃあ私そろそろ宴会の時間だから」
麻衣はその場から走って立ち去った。
(どうしよう…陸に早く連絡しないといけないよね…)
けれど携帯を部屋に置いてきてしまった事を思い出して後で連絡すればいいかと宴会場へと急いだ。
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