『-one-』

温泉旅行! P3


(むさくるしい…)

 レンタルのマイクロバスに男ばっかり15人がすし詰め状態。

 陸は一番後ろの席の窓際に座ってため息を吐いた。

 今頃は麻衣も温泉へ向かうバスの中だろうなぁ…と考えるのは麻衣の事ばかり。

 それなのにまだメールが一通も来ない。

(って俺が旅行だって教えるの忘れてた!)

 突然決まった旅行に落ち込んでいた陸は自分も旅行だという事を麻衣に伝え忘れていた。


「…最近、麻衣さん綺麗になったよな?」

 ピピピ…ピポ…

(何、麻衣!?)

 麻衣宛てのメールを打つ指が止まった

 突然聞こえてきた麻衣って言葉に反応してこっそり聞き耳を立てる。

「いい年なのに肌ツヤツヤだし?」

(当たり前だっつーの。俺がめーいっぱい愛してるし)

「彼氏いると思う?」

(俺!俺!)

「いないだろ?」

(いや、だから俺だって)

「そうだよな?いたら頻繁に店こねーよな?」

(だから店に彼氏がいるんだっつーの!ざまぁみろ!)

「いや、いるみたいだよ?」

 新人達の噂話に悠斗が割り込む声が聞こえた。

「えー マジっすか?」

「うん。美咲さんと話してるのチラッと聞こえた」

「どんな奴なんですかねー?」

 すぐ近くにいる麻衣の彼氏の噂話をする後輩達に陸はいい気分だった。

(言えるものならバラしてぇ)

「さぁ、俺もよく知らないけど…」

 悠斗がチラッと陸の顔を見た。

「陸さんの客だし、陸さんに聞いてみれば?」

(おいおい!いきなり振るのかよ!)

 前に座っている新人が振り返った。

「なに?」

「麻衣さんって彼氏いるって本当っすか?」

「あ、あぁ…いるみてーよ?」

(やべっ…心拍数上がってきた)

 陸はなるべく平静を装うようにして表情を変えずにいる。

「どんな奴か知ってるんすか?」

(どんな奴って…なんて答えれば…)

 陸が困っていると一番前の席に座る誠の声が聞こえた。

「年下で超ワガママで自己中で寂しがり屋らしいよ?」

(ま、誠さん…それはナイっすよ…)

 あまりの言われように陸はムカッを通り越してガックリと落ち込んだ。

「まじで!?そんな男なら俺チャンス有りかも」

(んだと?ないに決まってんだろーが!)

 陸は睨みつける。

「何言ってんの?ダメに決まってんでしょ。陸さんの客だし」

(ナイスフォロー悠斗!)

「麻衣さんをゲット出来るのは陸さんのヘルプの俺だろ」

(まずはお前からしばいてやるからな!)


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