『-one-』
悠斗と麻衣 P7
陸は何も言わずに麻衣の手を握ってまた座らせた。
ギュッと握ったまま離そうとしない。
「お好み焼きおいしかった?」
「うん、今度一緒に行こ?」
ちょっと機嫌直ったのかな?
「自分で焼くの楽しいよ?」
「ふんっ、俺悠斗じゃないもん」
え…?一瞬そのまま聞き流してしまう所だった。
「今、何て言った?何で悠斗くんが出て来るの?」
「え?きょ、今日は悠斗と行ったんだろ?」
明らかに動揺してますって。
何となく分かってきた、今日の超甘えっ子になってる理由が。
「うん、そうだよ。そうだ!今度さ陸が見たいって言ってたあのアクション物一緒に見に行こうね。おもしろそうだったよ!」
そう言うとまた口を尖らせて頬を膨らませて睨んできた。
「何?私と映画行きたくないの?」
「他の男と見た映画なんか見たくないっ」
って陸ってば単純でしょ。
「陸?今日はどこにいたの?」
自分の失言に気付いたのか布団に潜ろうとして芋虫のように動いている。
「お、俺…寝なくちゃ…」
「私の事が信用できなかったの?悠斗くんと何かあるとでも?」
「キスしてたじゃん!!」
「………」
「………」
映画館の中にも居たんだね?困ったなぁ…。
「あれは不意打ちだったの、許して?」
「…もう俺の事捨てて悠斗にするんだろ?」
また目に涙が溜まっている。
それで帰ってきてから最後とかわがままばっかり言ってたのかと全部納得。
「俺と別れるんだろ?嫌いになっちゃったんだろ?」
隣に座ってる陸を優しく抱きしめた。
「私は陸の事が大好きだよ。信じて、私も陸の事信じてるでしょ?だから陸も私の事信じて」
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