『-one-』

悠斗と麻衣 P6


 一体どうしちゃったの?まるで子供みたいに駄々をこねて口を尖らせて私を見ている。

「わがまま言わないで、飲んで?」

 薬を口の所まで持ってくと、口を尖らせたままプイッと横を向いてしまった。

「りーくー?はぁ…好きにしなさい」

 まるで子供だ。

 まったくいい年して薬も自分で飲めないなんて…。

 薬と水をサイドテーブルに置いて立ち上がると、陸が悲しそうな顔して見上げて来た。

「どうしたの?ちゃんと薬飲む?」

「薬なんか飲んでも効かない」

「薬が嫌いでもちゃんと飲んで!」

「麻衣がキスしたら治る!」

 そう言うと陸は私がキスするのをジッと待っている。

 どうして今日はこんなにわがままなの?

「チュッ」

「はい、治った?」

 軽くキスすると陸が目を開けてちょっと睨んだ。

「こんなの嫌だ、治らない!」

「わがまま言う元気があるなら仕事行きなさい!」

 そう言うと怒った顔をして布団の中に潜り込んでしまった。

「陸?どうしたの?何かあった?」

 潜り込んでしまった陸の背中をさすって話し掛けると、何か小さな声で言ってるのが聞こえて力任せに布団を引き剥がした。

「…ない」

「え?なに?」

「麻衣と別れたくないっ!」

 びっくりした。

 いきなり何を言い出したかと思った。

 大の大人でしかもホストで女の子をいつも酔わせてる男が目の前で膝を抱えて泣いている。

「ちょっと、陸?何言ってるの?」

「俺、麻衣と別れたくない。」

「何かあった?」

 急にこんな事言うわけがない。

 きっと何かあったんだと思って問い詰めながらふと思った。

「もしかして今日の事ですねてるの?」

 どうも当たったらしく口を尖らせ頬を膨らませながら目に涙を溜めて私を睨んだ。

 きっと女の子がやったらすっごくすっごく可愛いけど…陸あなたは男の人だから…

「デートじゃないでしょ?早く帰って来たし、機嫌直して?」

「今日どこ行った?何した?」

 そう言うと自分の横をバンバン叩いて座れと合図するから大人しく座って陸の手を握ってあげた。

「お好み焼き食べて、映画見て帰ってきたよ?」

「ほんとにそれだけ?」

「疑ってるの?」

 って聞かなくてもその目は疑ってるのね。

「信じてくれないならいい」

 麻衣はため息を吐いて立ち上がろうとした。


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