『-one-』
悠斗と麻衣 P4
私達は公開されたばかりのアクション物の映画を見る事にした。
そういえば、陸と映画見に来た事ないなぁ。
今度誘ってみよっかな?
あーでも真っ暗になったら映画どころじゃないかも。
頭の中で想像して思わず吹き出しそうになる。
「麻衣さん?なんか楽しそうですね?」
「え?あはは…」
「ところで、悠斗くんって何でホストになったの?」
「俺はスカウトなんです」
スカウトなんてほんとにあるんだぁ〜。
「何にもやりたい事がなくてブラブラしてたら声かけられて金になるならいっかーって」
「でも最初のうち全然金なんかなくって、これならバイトしてた方がましかもって思ってました」
私は悠斗くんを見ながら黙って話を聞いている。
「でもお客さんと話してると楽しいんですよ!元気がない人笑わせたり、励ましたり…」
目がキラキラしていてなんか陸にちょっと似ていた。
「ホストなんて聞こえが悪いけど、俺全然恥ずかしくないですよ!」
「悠斗くんはえらいね、なんか見直しちゃったな?」
「ま、麻衣さん…彼氏いるの分かってるんですけど、俺…」
手が伸びてきて私の手をギュッと握った。
「悠斗くん…ありがと。でも彼の事好きだから…」
私は悠斗くんの手の上にそっと片方の手を乗せた。
「そうですよね、すみません。」
「お店に行った時にまたたくさん話しよ?彼女が出来たら彼女の相談とか乗ったりとか…友達みたいになれたらいいかな?」
「麻衣さん、ココとココどっちが好きですか?」
急に額と頬を指で突かれながら聞かれた。
「え?こっち?」
戸 惑いながらも私は頬を指で差した。
「すっごい可愛くて悔しいからちょっと意地悪しますよ?」
そう言うと照明が落ちて来てだんだんと暗くなっていく中で悠斗くんは私の両手を握ってさっき指差した頬にキスをした。
「も、もぉ〜!」
「だから意地悪しますよ?って言ったんです。」
「信じられないっ!」
「いつか友達みたいにメールしたり電話したりして下さい」
「うん、そうだね」
二人で微笑みあってからスクリーンに向き直した。
でも後ろからすごい視線を感じて振り返ったけど暗くてよく分からなかった。
…まさか陸じゃないよね?
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