『-one-』

好きだから空回り P11:side陸


 麻衣の工場の近くに車を停めて仕事が終わるのを待っていた。

 初めて来る麻衣の職場。

 土曜日は昼まででもうじき終わるはずだった。

 今朝の麻衣の様子はやっぱりおかしくてちゃんと話さないと気が済まない。

 それにまだ麻衣に誕生日のお祝いをしてもらっていない。

 おめでとうの一言も言ってもらえず他の男と二人っきりでいる所と他の男の胸で泣いている所を見せ付けられただけだ。

(お仕置きしてやる…)

「…あれ?麻衣?」

 今通り過ぎた車の助手席に乗っていたのが麻衣にそっくりだったような気がした。

 見間違いじゃなかった。

 すぐに車が止まり降りて来たのは麻衣だった。

 両手に買い物袋を下げて運転席から降りた男と楽しそうに話しながら中に入っていく。

(また他の男と…)

 昨日から一度も見ていない笑顔は全部自分ではなく他の男へ向けてだった。

 激しく嫉妬の炎を燃やしたがそれよりも初めて見る麻衣の制服姿に見惚れた。

(可愛かったなぁ)

 OLらしく紺色のベストとスカートが似合っていた。

 コスプレとかは興味はなかったけれど好きな女が着るのはまた別の話だとよく分かった。

(今度はアレを着てもらおう)

 それよりも今日は出勤前までたっぷりと麻衣を抱き締めてお仕置きして麻衣を補給しようと決め込んでいた。

 だが目の前の光景を見て盛り上がってる気持ちは萎えてしまった。

 工場の駐車場で賑やかなバーベキューが始まった。

 陸はエンジンを掛けるとその場から走り去った。


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