『-one-』

好きだから空回り P12


 麻衣は部屋中に服を広げて携帯で電話を掛けた。

「もしもし美咲?今日ONE行く?」

「行くよー?」

「私も行くっ!」

「どーしたの?自分から行くって言うなんてー」

「リベンジよ、リベンジ!」

「はぁ?」

 麻衣の怒りは思わぬ方向へ向かっていた。

(可愛い服着てお化粧して陸のことドキドキさせて後悔させてやるんだからっ!)

 気合を入れた顔で化粧台に向かってほとんど使った事のない化粧品に手を伸ばす。

 店に入って最初に出迎えてくれたのは悠斗だった。

 悠斗は麻衣の姿を見てボケッとしてから顔を緩ませた。

「…麻衣さん、今日めっちゃ可愛いっすよ!」

「そぉ?」

 褒められて気分がよくて笑顔が零れる。

「やっべぇ…俺マジで麻衣さんに心奪われる〜」

「上手になったね〜」

 笑いながら悠斗の頬をペチペチと叩く。

「今日も陸さんのお祝いですか?」

「えっ?いや…あは」

「陸さんまだ来てないですよ。イベントなんですけど今日は同伴かと…」

 ズキンッと胸が痛んだ。

 さっきまでの決意が揺らいで弱気になってしまう。

「麻衣さん、陸さんが来るまで俺一緒に飲みたいです〜」

「よしっ!一緒に飲もう!」

 陸のバースデーイベント二日目。

 今日も陸目当ての女の子で店内はごった返している。

「陸さんは本当に人気あるんすよ」

「そうだねー。でも悠斗くんも格好いいよ?それに優しいし」

 麻衣は隣に座る悠斗にニコッと笑いかけた。

「ほんとに今日めっちゃ可愛いっす!どうしようマジで惚れそう!」

 べた褒めにされて思わず顔が赤くなる。

 ホストクラブなんてと思っていたけれどはまる人の気持ちが分かる気がした。

「あ、陸さんのお出ましですよー」

 悠斗の声に顔を上げる。

 みんなが一斉に入り口に注目している。

 今日も素敵なスーツ姿、隣には髪を綺麗に巻いたスタイルのいい若い女の子が立っている。

(私…頑張ったのに負けてるなぁ…)

 自分の姿を見下ろしてため息が出そうになると悠斗が小声で話し掛けてきた。

「俺は麻衣さんの方が絶対可愛いと思うっす」

 その言葉に自信が戻って来る。
(さぁ陸!早く私の存在に気がつけっ!)

 そう念じていると陸は麻衣の方を見て二人の目が合った。

 麻衣を見て陸は顔を赤くして顔を逸らした。

(ふふっ!作戦成功っ!)

 麻衣は上機嫌で鼻歌を歌い出した。

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