『-one-』

一人より二人 P17


 腰の動きを食い入るように見ていた陸は、快感に負けて目を閉じてしまいそうになった。

(エロッ!! すげぇ、エロい!!)

 自分から言い出したけれど、まさか本当に麻衣がやってくれるとは思わなかった。

 ぎこちなさはあるものの、カクカクと腰を前後に動かす麻衣は、唇を噛む仕草を見せながら、堪えきれないのか艶かしい吐息を漏らしている。

(これって、やっぱり……)

 快感に支配されつつも、客観的な自分が分析した。

 ただ動いているだけかと思った麻衣は、どうやら気持ちの良い場所を擦り付けているように見える。

 羞恥で顔を真っ赤にしてモジモジ動く麻衣も可愛いだろうけど、箍が外れてしまって暴走気味の麻衣はゾクゾクする。

 麻衣の姿を眺めていた陸は、好物すべてをテーブルに並べられたみたいに、口腔に溜まる唾液を喉を鳴らして呑み込んだ。

(頭の中が熱い……)

 頭の中だけじゃなく、身体も繋がっている場所も、あまりの熱さに溶けてしまいそうだ。

「陸……ぅ」

「なぁーに?」

 甘えた声で呼ばれて、応えた声が上擦ってしまった。

(カッコ悪ぃ……)

 こんな時だけ作動する、どうでもいい男のちっぽけなプライドだったが、すぐに頭から吹き飛んだ。

 麻衣が見下ろしている。

 快感に濡らして、欲に染めた瞳、そして唇が誘うように言葉を紡ぎ出す。

「ん……、また…ぁ、おっ……きく、なったぁ」

 うっとりとした表情でうわ言にように呟けば、緩やかだった腰の動きがまた激しさを増した。

「ウッ……くっ、すげ……っ」

 襞で埋め尽くされた内壁で擦り上げられ、根を上げそうになって呻くと、妖しく微笑んだ麻衣と目が合った。

「気持ち、いい?」

「……ッ! いいに決まってるじゃん! またすぐ達っちゃいそうなのに」

 いつだってそうだ、麻衣を翻弄しているつもりなのに、気が付けば麻衣に翻弄されている自分がいる。

 そんな風に気持ちを吐露した陸に、麻衣は小悪魔のような笑みを浮かべた。

「じゃあ、また……お腹に出しちゃう?」

 後ろ手で身体を支えていた麻衣は、ワザとなのか、無意識なのか、片手を離すと見せ付けるように柔らかそうな茂みを撫で上げた。

(クソッ!!)

 身体の奥で滾っていたマグマが一瞬にして吹き上げられ、頭の中が色んなものが焼き切れたような気がした。

「キャッ……ッ!!」

 気が付けば体勢を入れ替えて、麻衣の体をソファに押し付けていた。

「り、陸ぅ?」

「後で泣き言云ったって聞かないよ!」

 麻衣の足を割るように身体をねじ込ませ、片足を肩に担いで麻衣の唇を奪うために身体を倒す。

 唇で触れようとした刹那、麻衣の唇が声を発さずに言葉を伝えた。

(俺も、大好き)

 気持ちと唇を儀式のように静かに重ねてから、二人で一緒に激しい渦に身体を投げ出した。

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