『-one-』

一人より二人 P7


 静かなリビングに卑猥な音だけが響く。

 堪えられなくなった麻衣の声、両手で上下に扱くたびにぬめり気のある水音。

 陸はパジャマの上着の下から手を差し込んでいたが、それだけでは物足りず空いている手でボタンを外し始めた。

(麻衣の身体、すげぇ熱い)

 エッチをしなかった三週間と三日、決して触れなかったわけではない、抱きしめて眠っていたし、キスは毎日のようにしていた。

 それでも服の下の素肌に触れることはしなかった。

 硬く尖った小さな先端は指で摘まむと、まるでさくらんぼが色づくように見た目を変えていく。

「ねぇ、麻衣」

「ん……っ?」

「エッチしたかった?」

「え?」

 伏せていた顔を上げた麻衣は、動かしていた手を止めてきょとんとした後、少し目を伏せたかと思うと、再び手を動かし始めた。

 陸は返事を待ちながらパジャマの上着を脱がせ、露わになった肩に触れるだけのキスをした。

「麻衣?」

 もう一度名前を呼ぶと、麻衣は肩をピクリと震わせて頷いた。

 いや……頷いたように見えただけで、麻衣はゆっくりと身体を屈めていく。

 もしかしたら……という思いで、麻衣の身体から手を離した陸は、すぐにこれがさっきの質問に対する答えだと分かった。

 股間に埋められた頭、陰になってしまい見えないけれど、指とは違う熱くて柔らかいものが先端に触れた。

「ふ……ぅっ」

 男にとって嫌な行為じゃない、むしろお願いしたいと思っているし、以前はそれが挿入する前の通過儀礼のように、毎回のように相手の舌や唇をたっぷり楽しんだ。

 その考えを改めたのは麻衣と付き合うようになってからだ。

 女の子にとってその行為は必ずしも喜んでやれることかと言えば、やり方によっては耐えがたい苦痛を伴う。

 もちろんそういうプレイと同意したパートナー同士なら最高の行為だろうけど……。

 好きな女がエッチの時に見せる、困った顔や恥ずかしそうな顔は、雰囲気を盛り上げるスパイスになるけれど、本当に苦しそうな顔を見る趣味はなかった。

 初めの頃は気持ちと身体が先走ってばかりで、麻衣を気遣うことが出来なかった。

(自分からしてくれるなんて……)

 初めてじゃないけれど、麻衣が積極的になるシチュエーションは、酒の力を借りている時。

 今日のスイッチが入ってしまった原因は間違いなくDVDだろう。

 おずおずと伸ばしていた舌が、少しずつ大胆な動きに変わっていく。

 舌を絡める音に這い上がってくる快感、どうしても目で確かめたくなり、身体を倒して肘で支えた。


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