『-one-』
3days P48
陸の右手は頬に添えられているだけ、それなのに麻衣は顔を動かすことが出来なかった。
「恥ずかしいの?」
尋ねられた麻衣は素直にコクコクと頷いた。
自分でも鏡に映した裸をジロジロ見ることはない、それなのに明るい光に照らされた自分の裸にジッと視線が注がれている。
「もう……いい?」
約束したからイヤとは言えず、麻衣は早く解放して欲しいと陸にせがむ。
耳の側で陸の小さく笑う声、鏡の中の陸もそれと呼応するように口元に笑みを浮かべた。
「どうしよっかなぁ。俺はこのまま見ていたいんだけどなぁ」
「陸、お願い……お風呂……」
これ以上続いたらどうにかなってしまいそうだった。
体が熱くてその熱が頭の中をも冒してしまったのかぼんやりとする。
「そうだね。俺ももうこんなんだしさ……」
「あっ……」
「分かる? 麻衣のエッチな顔と体見てるだけなのに……ほら」
(熱い……それにすごく……)
下着越しなのに後ろから押し付けられた陸の熱の大きさと硬さに驚いた麻衣の体が揺れる。
「麻衣のお尻、柔らかくて……やらしい。こうすると……ほら、ぴったり填まるみたい」
陸の体がその位置を調整するように動き、その度に熱い塊が後ろの谷を探り隙間を埋めるように押し付けられる。
「は……っ、ぁ……」
呼吸が乱れ途切れた吐息が口から零れる。
まだ何も始まっていないのにもう長い時間愛されているかのように体が熱い、さらに押し付けられる熱が体の奥に引火したのか下腹部に痺れるような痛みを感じた。
「やらし……もうこんなに尖らせて……」
気付いていたからこそあえて口にされると恥ずかしさが増した。
陸の視線が胸の頂に注がれたまま動かされない。
見られていると分かれば分かるほど、麻衣の心とは反対にその姿はハッキリとしたものに変わっていく。
「見られると感じる?」
「ち、違……」
「でもさっきよりやらしく飛び出してる。もう触って欲しいのかな? それとも舐めて欲しいのかな?」
(いじわる、いじわる……もう……陸のバカァ)
いつも違う攻められ方に羞恥が限界を超えてしまった。
どんなに堪えようと思っても一度開かれてしまった涙腺を閉じることは出来そうもない。
みるみるうちに瞳が雫を湛え、瞬きでもすれば頬を伝うのは確実だった。
「麻衣……」
鏡に映る姿も当然同じで陸は戸惑ったように名前を呼ぶと手を伸ばして取ったタオルを顔に押し付けた。
涙は雫となる前に柔らかいタオルに吸い取られ、泣くつもりのなかった麻衣はホッとしたと同時に申し訳なく思ってしまった。
(こんな風に泣くつもりはなかったんだよ)
「そんなにイヤだった?」
心配そうな陸の声は頭の上から聞こえた。
片手はタオルで目を覆い片手は腰ではなく肩を抱き、その手は遠慮がちに肩を優しく撫でている。
何て答えようかと迷っていた麻衣はタオルを持つ陸の手を外しながら正直な気持ちを思い切って口にした。
「恥ずかしくて……死んじゃいそうなんだもん!」
それは大袈裟でもなんでもなく、本当に恥ずかしさで死んでしまえるんじゃないかと思った。
どうやらその答えは陸にとって百点満点だったらしい。
視界を奪っていたタオルが外れて目に飛び込んできた陸の顔はいつものように無邪気な笑顔でいっぱいになっていた。
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