『-one-』

好きだから空回り P6


「麻衣、ちょっとピッチ早いでしょ!」

「大丈夫だってぇ〜」

 もうお酒を飲むしかなかった。

 陸が居なくても他のホストの子が相手をしてくれて退屈だけはしなかった。

「ごめん、ちょっとトイレー」

 立ち上がった瞬間フラついて倒れそうになる。

「大丈夫っ?」

 体を支えてくれたのは隣に座ってた悠斗くんだった。

「へーき。へーき。」

 麻衣は心配そうな顔をする悠斗の肩をポンポンと叩いて化粧室へ向かった。

 化粧室を出た麻衣はフラつく足取りで酔いを醒ましに店の外に出た。

 店から出て少し離れた場所に座り込む。

 火照った頬を風が撫でるのが気持ちよかった。

「麻衣さん、今日は飲みすぎじゃないですか?」

 さっきの悠斗くんが声を掛けて来てニコッと笑う。

 麻衣はきょとんとして顔を上げた。

「いつもはそんな風に飲まないですよね?大丈夫ですか?」

 悠斗は麻衣の横に腰を下ろした。

 あまり話した事がないのに優しい言葉を掛けてもらえて胸が暖かくなる。

「いつもぉ?知ってるのぉ?」

「もちろん!今日は陸さんは忙しいからなかなかテーブルに付けないっすけど俺が今から声掛けてくるんで!」

「待って!」

 立ち上がる悠斗の服を掴んで引き止めた。

 ビックリした顔の悠斗に慌てて手を離して頭を下げた。

「あ、ごめんなさいっ。…も、もう少し酔いを醒まして行きたいから」

「いいですよ。じゃあ酔い醒ましに何かしましょうか?」

 悠斗はニコッと笑うともう一度麻衣の隣に座った。

「ん〜?何するの?」

「そうっすね…じゃあしりとりとか?」

「えぇ?しりとりー?」

「あー…ちょっと待って下さい!もうちょっと考えるっす!」

「いいよー。じゃあ私からねぇー“りんご”」

「って勝手に始めてるし…じゃあ“ごりら”」

「なんか定番のパターンじゃない?“らっぱ”」

「麻衣さんも定番の返しっすよ“ぱんだ”」

 二人はクスクスと笑いながらしりとりを続けた。

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