『-one-』

好きだから空回り P5


 入った瞬間目がチカチカした。

 入り口から続く花の列に溢れかえっている人。

「遅かったじゃない」

 麻衣はすぐに美咲がいるテーブルに案内してもらえた。

「ごめん。ちょっとね…」

 美咲と話をしながら視線は陸を探していた。

(あっ…!いたっ!)

 人が動いて隙間からチラッと陸の姿が目に入った。

 いつもとは違い少し派手なスーツを着て別人のようにセクシーなフェロモンを撒き散らしている。

(なんか格好良すぎる…)

 しかし次の瞬間胸がギュッって締め付けられた。

 陸の横には綺麗な女性が座っていて二人きりで話をしていた。

 こっちから見ていてもとてもいい雰囲気で二人は顔を寄せ合って親密そうに見えた。

「こんばんは」

 胸がチクチク痛むのを感じながら陸を見ていると声を掛けられた。

 それはこの店のオーナーの誠で美咲以外に陸との関係を知っている唯一の人。

「あ、こんばんわ」

「大丈夫ですか?今日は麻衣さんには辛いかもしれませんよ?」

「え?」

「何かあれば言ってくださいね」

 美咲と一言、二言言葉を交わすと忙しいのかまた別のテーブルへ歩いて行った。

 誠に言われた言葉が引っ掛かる。

(辛いってどういう意味?)

 ホストの陸を見るのが辛いという意味ならもうすでに胸はチクチク痛んでいた。

 けれど気にしないと自分に言い聞かせる。

 それよりも陸が自分の存在に気付かない事の方がショックだった。

 店に行けばすぐに気が付いて来てくれると思っていたのは自惚れだったのかなと落ち込む。

(あっ…)

 陸を見つめていたら目が合った。

 麻衣は手を振ろうと手を上げたが気付いた陸がびっくりした顔をして視線を逸らした。

(ど…して?)

 麻衣は誠の言った辛いというのはこの事だったのかと思った。


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