『-one-』

好きだから空回り P4


 問題が発覚したのは週が変わって金曜日の夕方。

「麻衣?プレゼント用意した?お店には何時頃行くの?」

 それは美咲から掛かってきた一本の電話。

「何の話?」

「え?今日陸くんのバースデーパーティのイベントがあるんでしょ?」

 バースデーパーティ。

 日本語で言うならお誕生日会。

 この時初めて陸が誕生日の事を知った。

(…私、彼女なのに…どうして)

 ふと先週の陸との会話を思い出した。

 陸が金、土と店に誘った事を思い出してようやく合点がいった。

「麻ー衣ー?行くでしょ?」

「行かない」

「なんでっ!?」

「だって…誕生日だって知らなかったもん。それにプレゼント用意してないし」

「………。で、でもお祝いしてあげなよ?麻衣が行ったら陸くんぜーったい喜ぶって」

 美咲が電話の向こうで一生懸命説得していた。

 そして夜、結局お店に向かっている。

 美咲に散々文句を言われて行く事になった。

 でも中に入る勇気がなくてもう30分近く店の周りをグルグル回っていた。

 ブブブ…
 バッグの中で携帯が震えている振動が伝わってきた。

 小さな液晶に【美咲】の表示。

「いつになったら来るの!早く来なさい!陸くん待ってるよ?」

 電話に出るなり怒鳴られた。

 怖気づいていたが「陸が待ってる」の言葉に背中を押されて中に入った。


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