『-one-』

好きだから空回り P2


「急にそんな事聞いてどうしたの?」

「キーワードは“外車と綺麗なお姉さん”さぁこの謎が君に解けるかっ!」

 麻衣がビシィッと人差し指を突き出した。

 ぺチッ!

「何ゆってんの?意味分かんねぇって」

 陸は麻衣の額を軽く叩くと近くにあった雑誌をパラパラとめくり始めた。

(もしかして動揺してる?)

 麻衣はジーッと陸の様子を確認する。

「麻ー衣。何が言いたいの?」

 ハァとため息を吐いた陸が顔を上げる。

 呆れたような口調でも目は笑っていて麻衣はホッとした。

「私…見た。陸が綺麗なお姉さんを助手席に乗せて外車を運転している所」

「エッ?」

 固まる陸。

 硬い表情で見つめ合う二人。

 なぜか気まずい沈黙になってしまってどちらも微妙な表情をした。

「ごめんね。その反応は続きを聞くのが怖いから言わなくていい」

「あ、ねぇ…麻衣?」

「オッケー!大丈夫!問題なし!ノープロブレム!」

(聞かなきゃ良かった)

 ホストなんだから女性と出掛けるのは普通にある事でしかも自分が見たのは付き

合う前の出来事。

 自分がとやかく言う事じゃない…それを承知で好きになって付き合う事にしたん

だからと自分に言い聞かせる。

 〜〜♪〜〜♪

 テーブルの上の携帯が鳴った。

「陸、携帯鳴ってるよ?」

「あ…うん」

 携帯を取ると陸はチラッと麻衣の方を気にしながら電話に出た。

「もしもし?おはよ。……そんなの気にするなよ。ん?当たり前だろ…会いに来て

くれるだけで嬉しいよ」

(はぁ…お客さんからか)

 相変わらずのセクシーボイスで話しかける相手は自分じゃない。

 分かっていてもその場にいるのが辛くてキッチンへ逃げ込んだ。


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