『-one-』

コスプレ P4


 和やかな昼食を終えるとすぐに作業に入った。

 カボチャの形をしたキャンドルを各テーブルに置き天井にはカボチャやお化けのついたガーランドを飾りつけた。

 もちろん可愛いパッケージのお菓子を用意する事にも余念がない。

 扉にはハロウィン用のリースが飾られカボチャが3つ積み重ねられたエアバルーンがお客様を出迎えるように置かれた。

 フロアの中央には1メートルを超える大きなカボチャのエアバルーンが置かれ、その周りを小さなバルーンがぷかぷかと浮かび小さな風でも揺れていた。

 ――パンッ!

 誰かが触ったのか浮かんでいたバルーンの一つが大きな音を立てて割れた。

「誰だよっ! 苦労して膨らませたんだからな!」

 バルーンにヘリウムガスを詰めた張本人である陸が声を張り上げた。

 ハロウィンのイベントの準備は着々と進んでいた。

「お待たせぇ!」

「美咲っ!?」

 突然、店内に響いた明るい声は美咲だった。

 両手に大きな袋を提げながらヨロヨロ歩いて来た。

「麻衣も借り出されたの? ほんとここの経営者は人使い荒いよねぇ」

 近くに誠がいるにも関わらず大きな声で言い放つとすぐに誠がやってきた。

「時間も守れねぇよな社長に言われたくねぇよ」

「あら、仕事ではちゃんとやってるわよ」

「どーだか。で……それが?」

「うん、そうそう。じゃあ……麻衣後でね!」

 美咲は手を振りながら慌しく誠と二人で奥へと消えて行った。

 一体なんだったんだろうと麻衣は首を傾げたが開店時間が迫っていることもあり作業の続きに没頭することにした。

 ほとんど飾りつけが終わりデザートで出したババロアとパイの後片付けを済ませると周りにいた人が減っている事に気が付いた。

(あれ…陸もどこ行ったんだろう)

 麻衣が陸を探してキョロキョロしていると急に騒がしい声が聞こえて来た。

「え……」

 いきなり目の前に現れた光景に麻衣は言葉を失った。

 まさにカーニバルと呼ぶべきに相応しく思い思いの仮装をした面々がゾロゾロと出て来た。

 その中でも一際目を引くのは誠と美咲の二人だった。

「ねぇ、これどう?」

 美咲は腰に手をやり胸を張ってポーズを取った、もちろんその隣には誠が立っている。

(どう……って言われても)

 その姿は海賊そのもので美咲は大きめの海賊帽子を被り胸を強調したビスチェ風のドレスを身に着けていた。

「オーランド・ブルームとキーラ・ナイトレイのつもりらしいよ」

 そう言いながら陸が姿を現した。

 麻衣はその姿を見ると目を丸くしてたった今驚いたばかりの誠と美咲のことは頭から消えてしまった。

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