『-one-』

コスプレ P2


「どーしたのかな? 俺たちでよければ力になっちゃうよー」

「あーぁ、女の子がこんな重い荷物を持ってー」

「困ってる女の子を見たら助けなさいってじいちゃんの遺言でー」

「可愛い子ならとーぜんっしょ!」

「どっんな顔しってるかなぁ!」

 立ち止まっていた麻衣は後ろからからかうような声が近付いて来るのに気が付いて重たい足を動かした。

(もう! こんな時に…)

 手が痺れるような感覚に耐えながら持ち手を握り直そうとした麻衣だが急に両手が軽くなった。

「うぉっ! マジで重いっ!」

「袋破れるんじゃね?」

 両側から挟みこまれるように現れた男二人が麻衣の荷物を持ち通り過ぎた。

「あ……」

 その二人を見てポカンとした。

 見覚えのあるその顔はoneの新人ホストだった。

「なぁんで電話しないかなぁ? せっかくの可愛い手をこんなに赤くして」

 後から伸びて来た手は麻衣の手を労わるように擦っている。

「陸っ! それにみんなも! どうしたの?」

 振り返れば麻衣を抱きしめるように立っている陸、その後には悠斗と響が立っていて両手には東急ハンズの袋を提げていた。

 突然の出来事に目をパチクリさせていると陸は麻衣を促して歩き始めた。

 両手に袋を提げた悠斗と響は麻衣に声を掛けると通り過ぎて二人の前を歩き始めた、陸もそうだが全員がいつもの仕事着(スーツ)ではなくカジュアルな服に身を包んでいた。

「用意してた飾りが全然足んなくてさ。 買い出しに行ってたとこ」

 ホラと陸は顎で前の二人が持つ袋を示した。

「そうだったんだぁ。良かったぁ……ちょうど陸に電話しようと思ってたとこだったの!」

「だったら駅着いた時に電話すれば良かったのに、女の子の手は重い荷物を持つためにあるんじゃないでしょ」

「何のためにあるの?」

「好きな相手の手を握ってあげるため……じゃない?」

 陸はパチンとウインクすると空いている左手を体の横でヒラヒラさせてアピールした。

 あからさまなアピールに吹きだしながらも麻衣は迷わずその手を握り、寄り添う短い影を歩道に落としながら歩いた。


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