『-one-』

コスプレ P1


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「ねみ……じゃあ俺先に行ってるから」

「うん。お昼前には私も着くように行くよ」

「ったく、何もそこまでする事ないじゃん。だいたい麻衣はあいつら甘やかしすぎ!」

「いいの! ほら遅くなっちゃうよ」

「分かった。じゃあ後でね。荷物多くなるようなら電話して」

「ん……行ってらっしゃい」

 キスをして陸を送り出すと麻衣は足早にキッチンへと戻った。

 作り終えたサンドイッチを横によけると切れ目を入れたウインナーをフライパンに入れ刻んだキャベツを耐熱容器に入れて電子レンジへ。

 一度フライパンを揺すってからホットドッグ用のパンに切れ目を入れ始めた。

「二袋じゃ足りなかったかな?」

 ひとりごちた麻衣は視界の隅に入ったサンドイッチの山を見ると苦笑いを浮かべた。

 朝六時から準備を始めてもまだ作り終えていない事にやはり昨夜のうちに準備をしておけばよかったと後悔していた。

 普通なら仕事のある金曜日、仕事を休んでまでこんな事をしてるのは数日前に遡る。


「――と、いう事で女性ならではの細やかな気配り期待してます。あーもちろん力仕事はうちの奴らをコキ使ってもらって構わないからね」

 ヴーヴ・クリコのホワイト・ラベルを手土産に持って来た誠に陸は最初からいい顔をしなかったがその予感は的中した。

 承諾するしかない状況に追い込まれた麻衣が苦笑いを浮かべると誠は仕事場では見せない自信たっぷりの笑顔でさらに言葉を続けた。

「もちろん、アルバイト代は払いますよ」

「ロブマイヤーのバレリーナシリーズ、シャンパンフルート」

「ったく……ちゃっかりしてるなお前は」

 麻衣の労働の代価として前から欲しかったシャンパングラスを口にした陸に誠は呆れながらも承諾して契約は成立した。


 麻衣はキッチンの時計に目をやってハッとした。

「あぁっ!! 早くしないと遅くなっちゃうっ」

 大きな紙袋二つに出来上がったばかりの料理を詰めながらバタバタと出掛ける準備を始めた。

 栄町駅で降りた麻衣は両手に紙袋を下げ地下街を歩き12番出口から地上に出るとホッと息をついて紙袋を置いて軽く手を振った。

 持ち手が食い込んで手の平は真っ赤になっている。

「早くしないと……お昼になっちゃうっ」

 ゆっくり休んでもいられないと麻衣は再び袋を持ち上げると歩き始めた。

 だが歩いて数分も経たないうちに麻衣の足取りは重くなっていった。

(やっぱり陸に迎えに来てもらおうかな)

 店まで後数分という所でとうとう足が動かなくなってしまった。

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