『-one-』

公認彼氏 P17


「い…じわる…」

 恨めしさをこめた視線を陸に送った。

 私の視線を受けて陸は何の事?ととぼけた表情をしながらも口元を緩ませている。

 陸は膝の上に肘を付くと私の手を握ったまま顔の高さまで持ち上げた。

 まるで指にキスでもするように顔に近づける。

 その仕草がすごく優しくしてドキッとしていると陸はゆっくり口を開いた。

「ほんとは……俺以外にいたりして」

「……何が?」

「いいなぁと思ってる年上の男…とかさ」

 陸は私の顔から視線を外すと私の髪に手を伸ばして耳の下辺りで指先に髪を巻き付けている。

 さすがにその言葉にカッと来た。

 私は髪を弄っている陸の手を掴むと両手でギュッと握り直した。

「いるわけないっ! 陸しかいないって分かってるくせにそういう事言わないでっ!」

 本心じゃないと分かっていても試されるような事を言われるのは心外だった。

(あ…そういうことだ…)

 陸も私が本心で言ってない事は分かっていたけれど、嘘でもそういう事を口にするのが許せなかったんだ。

 特に一番気にしている年齢の事だったからなおさらだったかもしれない。

 ―私も陸に同じような事をしたんだ。

 ハッとした表情を浮かべた私を見て陸は悟ったような穏やかな笑みを浮かべた。

「陸…ごめんなさい」

「…ん? 嫌だよ、許さない」

「陸ぅ〜」

「なぁに、そんな可愛い顔をしても今日は簡単には許してあげないよ」

 少し尖った私の唇を指先でツンツンと突付いた。

 含みのある笑い方にこれから何が起きるのか怖くなった。

 思わず腰が引けて後ずさりすると陸はベッドから下りてスーツの上着とベストを脱ぎ、細いネクタイも外した。

 シャツのボタンを二つ三つと開けるとベッド横に立ち私を見下ろした。

「さて…どうしようかっなぁ?」

「ど、どうしようって…」

 その声はやけに楽しげに弾んでいる。

「悪い子にはお仕置きがいるよね?」

 陸は妖しい笑みを浮かべた。

 いつもそういう時はエッチな事はするけれど優しい事を知っている私はまたいつもの事だろうと高をくくっていた。


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